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 「高齢者の重大事故は本当に多いのか?」 バックナンバー

 高齢者が事故を起こすと、どのTV局も鬼の首を取ったように大々的に報道する。そのため交通事故-特に重大な交通死亡事故-は圧倒的に高齢者に多いのかと思わせる。おそらく多くの人がそのように感じているだろう。

 しかし、現実の数字を確認すると違った事実が浮かび上がる。どういうことか?
令和4年の自動車運転者による年齢層別死亡事故の人的要因比較によれば、75歳以上の高齢者による死亡事故件数は307件で、75歳未満の運転者は1521件である。

 つまり
75歳未満による死亡事故件数が圧倒的に多い。確かに別の数字-免許保有者10万人当たりの死亡事故件数-は、(令和4年実績)75歳未満は2.5件、75歳以上は5.7件で、2倍以上の事故を起こしている。

 おそらくこの数字で高齢者の事故が多いことを強調しているのだろう。しかし
極論すれば75歳以上の高齢者の死亡事故が0件になったとしても1521件の死亡事故が存在するのは事実である。

 
ことさら高齢者の事故の多さをTVが強調する意図が理解できない。何かの意図をもって報道しているのだろうか?(だとするとそれで利益を得ている人がいるはず。一部利益を得ている業種はあるが…)それとも、数字を客観的に捉えることなく、高齢者の重大な交通事故は多いとの思い込みで報道しているのだろうか?

 
最近のTV報道では政治関係などにおいても、どのTV局もほぼ同じような切り口で報道しているような気がしてならない。しかもよく使われるコメンテイターは4社の中のいくつかを掛け持ちしている。鋭い独自の切り口をするコメンテイターは極めて少ない

 
TV局は、当然のことだが報道の一翼を担っている。新聞、雑誌は本来的にはライバルのはずである。しかし、TV局は臆面もなく新聞報道とか文春をコンパクトにまとめて読み上げているだけである。

 
自社で記者が取材を繰り返して報道するのが本来の姿のはずである。ライバルであるはずの新聞の記事を使うことに抵抗はないのだろうか?TV局だけでなく、大手新聞が発端となって社会問題となった事件の記憶もない。記者クラブで大本営発表のコピーを報道しているに過ぎない。

 
ほとんど新しい問題を提起しているのは週刊文春であろう。ジャニーズ事件も20年も前から提起していた。しかし、TV局も新聞も知って知らない振りをし続けた。これでは多くの国民に支持されるはずがない。

 それは報道分野だけに留まらない。バラエティ分野でもひな壇に多くの芸人などをならべ仲間内でおしゃべりしているような気がしてならない。これもまたどのTV局も横並びに感じるのは私だけであろうか。

 
新聞社が部数を落とし、TV局が視聴率を下げているのも当然と言えば当然であろう。お金を払ってまで買う価値がないからである。実際私もある全国紙を4部取っていたが全部やめた。それだけの価値を感じないからである。

 回りくどい話になったが、
結局高齢者の事故をことさら大々的に報道するのは、何も考えず繰り返しているのに過ぎないのではないだろうか?本当に重大な交通事故を減らすために報道するなら、より人的要因を分析することが必要であろう。

 例えば
高齢者の人的要因の約3分の1は操作不適、つまり年齢のよる反応の遅さとおもわれる。75歳未満の人的要因は安全不確認と前方不注意である。こういう事故が発生したときによく起こる人的原因を正確に指摘しながら報道するという切り口もある。

 これによって
75歳未満の交通事故の半分が減少すれば、令和4年の事故数で言えば317件の死亡事故の減少につながる。この数は75歳以上の307件を超える数である。

 
TV局はYou Tubeに押されがちではある。しかし、社会的影響力は下がりつつも、現在もなお一定の力を持っている。より影響力を大きくし、より視聴率を上げるためにも、私はマスコミが現状を打破する頑張りを期待している一人である。

2024年02月