「塾はどこも同じですか?」 バックナンバー
「アナタはなぜ子供を塾に通わせるのですか?」
そう問いかけるとほとんどすべての保護者は「子供の学力を上げるため」と、答えるだろう。「なぜそういう分かり切った質問をするのか!」と感じる保護者もいるに違いない。
保護者のその目的は間違ってはいない。しかしその目的を達成しているかどうかははなはだ疑問である。なぜなら勉強を教える塾教師の質を、保護者が吟味しているかどうかが疑問だからだ。
「塾教師=勉強ができる」という保護者の認識は幻想に過ぎない。身も蓋もない表現をすれば、「問題がまともに解けない塾教師」が多くいる現実があるからだ。それは今に始まったことではない。
塾業界の存在が社会的に大きくなりつつあった1980年代の初期までは、塾教師の学力は一定のレベルを保っていたと思う。ところが塾の需要の拡大に伴い、1990年代から塾教師の質が徐々に下がっていったと私は感じている。
あるデータによれば1986年の塾従業員数は16~17万人だったが、2015年には約2倍の30万人にも達している。この量の増加は必然的に質の低下を伴ったのではないか。それをうらづける学校の教師の採用試験の倍率の変化がある。唐突のようだが、学校の教師の採用試験と塾教師のレベルとは強い相関関係があるからだ。
どういうことか。教師になりたくて公立学校の教師採用試験を受けたが、採用されなかった人たちの何割かが塾教師になった。塾はそういう若者の受け皿にもなっていたし、現在もその状況がある。
学校の教師が人気だった頃は、採用試験の倍率が極めて高かった。そのピークの2000年(就職氷河期でもあった)には小学校で12.5倍であったものが、2018年には3.2倍に下がり、東京都では2019年には1.8倍にまで下がっている。広島県でも何と1.9倍の広き門である。
企業で採用に関わっている人なら、その倍率がいかに低いか分かると思う。その企業に内定しても他社に行く者もいる。2倍を切るということは、不採用になる人が限りなく少ないということだ。3倍を切ると一定のレベルを確保することが困難だと主張する人もいる。
超広き門の教師採用試験に不合格の人とか、最初から採用試験さえ諦めていた人さえも塾教師の中にはいる。そのため問題がまともに解けない塾教師は、保護者の想像を超す割合でいるのである。加えて賃金の安い教師数の確保のために多数の学生アルバイトもいる。
「塾のやっている問題以外の質問は受け付けない」と明言する塾がある。また生徒が質問すると「今度一緒に考えよう」とその場をごまかす教師もいる。信じられないが、生徒から質問されるとトイレに行って塾の指導時間が終わる頃まで教室に帰って来ない塾教師もいる。他塾から淳風塾に移ってきた生徒のナマナマしい証言である。
「塾はどこも同じ」と思い込んでいる保護者もいる。物品販売と違い「目に見えにくいサービス=学力向上のノウハウ」を提供している塾の違いは分かりにくいのは事実であるが、上がったか上がっていないかは明確に分かる。
「塾はどこも同じ」と考える人は「高校はどこも同じ」「大学はどこも同じ」となぜ言わないのだろう?「高校はどこも同じ」ではありません。「大学はどこも同じ」ではありません。同じように、「塾はどこも同じ」ではありません。
2024年08月