「伸びない生徒の特長」 バックナンバー
古くて最も新しい問題がある。それは「伸びる生徒と伸び悩む生徒の相違」である。いつの時代でも古びることのない“永遠の謎”かもしれない。
伸び悩む生徒にはいくつかの特長がある。これに当てはめれば、わが子が伸びやすい子か、それとも伸び悩む子か、かなりの高い確率でわかる。もちろん自然科学における現象と違って、100%という訳にはいかない。
伸び悩む子の特徴の最たるものは集中力の欠如である。授業中でも勉強に集中しない。ともすれば何か面白いことがないかと周りをキョロキョロ見たり、同じように集中力のない生徒とアイコンタクトを取ったり、平気でオシャベリをする。
こういう生徒の行動はワンパターンである。教師が重要な説明をしていて、それに関連した例を挙げると、その例に食いつくのである。つまり、重要なことをしっかり聞いて理解しようとする姿勢ではなく、授業を脱線させようとする。質問を装いながら、実は授業妨害に近い。こういうパターンを繰り返す生徒で、大きく伸びた子を私は知らない。
こういう生徒が複数名いると授業の質は下がる。実際、授業を始めるたびに「静かにするように」と言わなければならない集団もある。学校の教師は1クラスの人数が多いので、そういう「真剣に授業を聞く気のない生徒」がいる確率的は高いだろう。こういう生徒がいると、その生徒だけでなく他の生徒も迷惑する。
これは幼い時から、「他人の話をしっかり聞く“しつけ”」ができてないのではないだろうか?勉強の結果だけ求める保護者もいるが、勉強も生活の一部である。勉強だけが切り離された、特殊な存在ではないのである。
次に基礎の欠如である。基礎のできていない生徒が、応用問題ができないのは自明の理である。数学で言えば、掛け算九九、足し算、引き算のスピードである。掛け算九九ができるというのは、掛け算九九がスラスラ言えることではない。例えば。24になる掛け算は1と24、2と12、3と8、4と6がスッと頭に浮かぶということである。
簡単な足し算、引き算が暗算でスラスラできない中学生もいる。小数計算、分数計算になると、できない生徒は想像以上に多い。これでは数学だけでなく、理科の1分野ができるようにはならない。
さらには問題が、足し算、引き算、掛け算、割り算のどれを使ったらいいのか分からない生徒も多い。小学校時代にクリアできていなければならない基礎が出来てないのである。基礎のできていない生徒は教えたそのときだけはできるが、すぐに忘れてしまう。まさに砂上の楼閣である。
数学を例に挙げたが、国語はさらに深刻である。一文一文が何を書いているのか理解できない生徒も多い。信じられない方がいたら、何かの一文、句点から句点まで(。~。まで)をお子さんに読ませて、その文が何を書いていたのかを自分の言葉で説明させるとお判りになる。
おそらくお子さんは、その文章をそのまま思い出しながら言おうとする。つまり、何を書いていたのか、正しく理解していないのである。これでは国語の問題が出来ないだけではない。すべての教科は日本語で書かれている。どの科目も苦しい状況を生むことになる。
広島県の公立高校の最近の入試問題を一度見てほしい。数学でさえ、文章の読解が出来なければ、何を問われているのかさえ分からない生徒が多いだろう。
勉強に早道はない。小学校の基礎を固めておくこと、集中力をつけること-これなくして大きく伸びることは極めて厳しい。実はもう一つ保護者の姿勢、態度によっても生徒の伸びは大きく変わる。しかし、これは別の機会に…。
2023年09月