「やっと賃上げの傾向」 バックナンバー
この「塾長のひとりごと」で少子化についての最近のコラム
〇 2017年8月「少子高齢化の行きつく先」
〇 2022年9月「地球上から日本人がいなくなる」
1.2017年8月掲載「少子高齢化の行きつく先」
産経新聞論説委員著「未来の年表」より
2020年:女性の2人に1人が50歳以上に
2024年:日本人の3人に1人が65歳以上に
2033年:全国の3分の1が空き家になる
2040年:自治体の半数が消滅の危機に
2050年:日本のGDPが世界7位になる
簡略化すると以上となる。この原因は少子高齢化である。少子高齢化の原因は多岐にわたるが、政治家も役人も国民もがそれを直視することなく、「まぁ、なんとかなる」と目をふさいできたのが、最も大きいのではないか。
企業は己の会社の利益だけを優先し、正社員比率を下げ、非正規社員で肩代わりさせた。その結果、彼らの生活は不安定になり、結婚できない若者を増加させる結果となった。
2.2022年9月掲載「地球上から日本人がいなくなる」
西暦 人口
平安時代:(1150年) 630万人
江戸時代:(18C以降) 3200万人
明治時代:(1912年) 5007万人
昭和時代:(1967年) 10000万人
令和4年:(2022年) 12483万人
:2100年 予想 4645万人(低位予想)
2020年の人口1億2367万人で世界11位(195か国中)が、明治の初期の人口に逆戻りする。平均で1年間に100万人が減少する計算になる。
人口減の原因は複雑に絡み合っているが、物事は単純化して捉えると本質が見えるものだ。結婚できない経済的理由が大きな原因の一つではないか。企業は非正規社員の割合を増やすだけでなく、給与も30年間上がっていない。こういう国は先進国の中で日本だけである。
企業経営者は自社の存続、発展のための戦略を組み立てている。当然と言えば当然だが、政府もそれを後押しするように法人税を下げ、その穴埋めに消費税を上げている。そのため企業は空前の内部留保金をため込んでいる。企業栄えて国滅ぶ社会の仕組みである。
ざっと挙げれば以上となる。政府はこの二、三十年新自由主義の考え方を推進したため、弱肉強食の傾向がジワジワ進行した。また、受益者負担の考え方も根付かせた。つまり子育ては保護者の全面的な責任で、国家がそれを支えるという考え方はまったくなかった。
新自由主義の考え方からすれば、政府が「賃上げ」を企業に要請すること自体が矛盾である。この何年間かは不景気と少子化の流れが激しく、矛盾する要望ではあるが、政府も企業に「賃金アップ」を要請せざるを得ない状況まで来ていた。
ところが、あの「ユニクロ」が、最高で40%の賃上げを発表してから一気に流れが変わった。イオンが非正規社員の賃上げを発表し、トヨタ、ホンダは春闘の組合要求に満額回答した。
少子化によって若者の数は激減している。余程の魅力のある企業は別にして、一般的に言えば、賃金の低い企業より賃金の高い企業を選択するのは極めて自然な流れである。賃金を上げることを渋る企業は、人手不足によってその存続が危うくなる。
人手不足でなくても、優秀な人材を賃金の良い会社にとられてしまう。グローバル化における激しい競争社会の中で勝ち抜くには、それ相応の人材の確保が必要である。日本の労働者の7割は中小企業で働いている。大企業が下請けの中小企業との取引で適正な価格を支払わなければ、下請けの中小企業は疲弊し、いずれはそのツケは大企業に跳ね返ることになる。
若者の結婚への調査では「結婚を望まない」割合も多い。しかし、それは現在の親を頼っていれば、のんびりと生きていけるという状況があることも理由の一つではないか。少子高齢社会では現在の高齢者の年金も減ることが予想される。親を頼ってばかりでは生きていけない時代が目前に迫っている。
そういう社会が現実的になったとき、結婚への意識も大きく変わるのではないだろうか。人類の営みは、親から子へ子から孫へと、その生活基盤とともに連綿と続いてきた。日本社会の存続のためにも、企業は社会的責任を今一度噛みしめる必要があると思う。
2023年03月