受験する高校は何で決める? バックナンバー
今年も1か月を残すだけになった。来春の受験を控えた生徒・保護者にとっては、例年と比べておそらく時間の経過が早く感じられたのではないかと思う。
彼らにとってはまだまだ時間があると、「何となく」感じている人もいるだろう。しかし、高校受験に例を取ると、私立入試まで約2か月、公立入試まで3か月を残すのみである。
中学校では私立高校の受験校を迫られている時期でもある。すでに受験校を決めている生徒も多いだろう。さらに12月下旬までには受験する公立高校も決定することになる。
現状の高校入試の偏差値をみると、有名高校、公立高校、一般私立高校というように、広島ではサンドイッチ型の高校レベルになっている。六校が総合選抜の時期には公立高校の入試偏差値が下がり、中堅の私立高校がレベルアップした時代があった。しかし、現在では多くの私立高校は滑り止めの傾向が強くなっている。
広島市内で言えば、総合選抜-広島市内の六つの高校を東西三校ずつに分けて、自分の希望する高校を選択する制度。そのためどの六校のレベルはどの高校もまったく同じ-の時代はいわゆる六校が最もレベルダウンした時代である。40人クラスで言えば、12~13人までが合格できた時代である。
余談だが、この時代に基町、舟入、国泰寺など上位校を卒業した人たちの中には、まるで自分までもレベルアップしたかのような錯覚をしている人もいる。後輩に優秀な生徒が多く輩出するだけのことであり、当時卒業した人のレベルが上がったわけではない。
入試方法が総合選抜から単独選抜に変わっただけでなく、不景気の長期化と地方都市の衰退化によってそれぞれの高校のレベルが大きく変化している。
どういうことか。不景気による保護者の収入の伸び悩みにより、授業料の高い私立から公安い立高校希望が増えたことである。また、地方の衰退化のあおりを受けて、地方から大都市へ仕事を求めて移住する者が増えている。
その保護者の子供たちの中には、当然のことながら優秀な生徒がいる。彼らが地方にいれば受験したであろう有名高校も、優秀な生徒の確保が困難になりつつある。加えて出生数の減少はそれを助長している。
一つの指標として、東大合格者数を分析するとそれが明確に出る。30年前の東大合格者の数と現在の東大合格者数の割合を分析すると、地方の高校の割合が確実に下がっていて、大都市圏の合格者の割合が明らかに増加している。この傾向はさらに続くと思われる。
ところで、私立高校、公立高校の選択の基準は何だろう。六校が単独選抜になったときに、旧一中である国泰寺高校が最も上位の高校になると想像していた。しかし、基町高校が徐々にレベルアップし、今では六校の最上位に位置している。
その理由は明らかである。国泰寺は校舎が古いのだ。そのため受験生にとって好印象を与える建物ではない。さらに空調の設備さえ整っていない。それに比べ基町高校はまるで美術館のような佇まいである。さらに空調だけでなく色んな設備も完備している。
子供たちにとって伝統はそれほど価値のある基準ではなかったのである。私の勝手な想像だが、教育委員会の思惑は大きく外れたのではないか。大人たちが持つ価値基準は子供たちには通用しない。過去の古い価値観は音を立てて崩壊しつつある。
逆に言えば現在の有名高校、公立高校の序列、滑り止めとなっている私立高校の立場も、一気に変わることも予想される。
来春入試を控えている生徒たちは、現在のランクは永遠に続くものではないことを肝に銘じてほしい。そして高校で何を学びたいかを真剣に考え、それがより可能な高校を受験して欲しいと願っている。
もう一度言う。現在の高校の序列は現在の序列に過ぎない。10年後、20年後には大きく変わっているだろう。自分の将来の夢をより実現できる高校に受験して欲しい。
2021年12月