オリンピック開会式のトラブル バックナンバー
オリンピックの開会式は、私が想像していたものと明らかに違っていた。日本の伝統美と、アニメに象徴される映像、さらに最新のハイテクを駆使したものを期待していた。唯一、感動を得たのは「地球ドローン」だけだった。
*文中の< >内は週刊文春の記事引用
その顛末を週刊文春8月5日号がすっぱ抜いている。マスコミ報道でご存じのように、セレモニーを担当する演出責任者が次々に交代した。文春によれば、<開閉会式の当初の予算は91億円だったが、19年時点で130億円、さらに延期に伴って165億円にまで膨らんだという。迷走に迷走を重ねて予算も時間も浪費され、多くの人が傷ついた末に本番を迎えてしまったのです。>
<19年、能楽師野村萬斎氏に代わり、演出責任者に抜擢されたMIKIKO氏は、チームの総力を結集し、演出内容やキャスティング、衣装プランなどを固めていった>
MIKIKO氏の当初の案では、<新国立競技場に1台のバイクが颯爽と走ってくるシーンから幕を開け、Perfumeがステージ上でパフォーマンス。プロジェクションマッピングを駆使し、東京の街や張り巡らされた地下鉄の路線が次々浮かび上がる。ワイヤーフレームで作られた車で登場するのは、ダンサー兼歌手の三浦大知。映し出された三浦の顔が徐々に木の根へと変貌し、会場中に広がった根は巨木となって空へ向かっていく。>
MiKIKO氏によるオープニング案は、週刊文春で読んで頂きたいが、彼女の案の特徴は<最新のテクノロジーと人間の身体表現とを絶妙に融合させていること。>である。実施されたそれとは明らかにレベルが違う。私が唯一感動を受けたドローンによる地球の演出もMIKIKO氏のパクリだという。
<昨年5月11日の、MIKIKO氏は、電通代表取締役で「五輪事業を仕切ってきた」高田佳夫氏らによって“排除”されてしまう。代わりの責任者に就いたのが、高田市と電通同期のCMクリエイター・佐々木宏氏だ。>
責任者についた佐々木氏は、MIKIKO氏の案を切り刻み、当初のストーリーを全く無視した形で企画を切り貼りしたという。落胆したMIKIKO氏は辞任した。ここから開会式に関係した人たちのダッチロールが始まる。
オリンピックにオリンピッグ(豚)と語呂合わせして、渡辺直美氏に豚の格好をさせる案を出して、辞任に追い込まれた佐々木氏。しかし、<高田氏や佐々木氏がMIKIKO氏を外していく過程が明るみに出たことで、電通が一歩引く態勢とならざるを得なくなりました。代わりに寄りあい所帯の組織委が仕切ることになったのですが、人選などすべて演出チームにまる投げで、今度はガバナンスが効かなくなったのです。>
さらには佐々木氏に代わって責任者に任じられた小林氏も、ホロコーストを揶揄したことで解任されることに。音楽担当も人権問題で辞任に追い込まれたのは、記憶の新しい事件だろう。
加えて、<江戸文化である火消しは小池百合子都知事が「演出に入れて。絶対よ」と求めていました。都知事選で、火消し団体の支援を受けた“恩返し”の意味もあるのでしょう。>など、政治的圧力もあったようだ。
新型コロナで日本が混迷している中で開かれたオリパラ。開催したからには素晴らしい大会になって欲しいと願っている人は多いだろう。実際、日本の選手は目覚ましい活躍をしている。それは実に日本人として嬉しい限りである。しかし、私でさえ物足りなく感じたあの開会式を世界の人々はどのように感じただろうか?
2021年08月