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 塾に行けばすべて夢が叶う??     バックナンバー

 「塾と成績」は古くて新しい問題である。何度もこのコラムで取り上げているが、塾にとっては常に悩ましい問題でもある。

 「塾に通えば希望が叶う」と思い込んでいる生徒・保護者がいる。こういえば身も蓋もないが、客観的に可能な希望もあれば無理な希望もある。例えば、走るのが苦手な子を日本を代表する選手にして欲しいと望むのと同じである。

 多くの生徒保護者の身近な希望は成績アップであろう。そのためにセコイ手を使う塾もある。学校の定期テストで出た問題ばかりをそのままやらせるのである。中学校の中には同じ問題をそのまま出す「手抜きの教師」もいて、その場合は高得点が得られる。

 小学校の場合は最悪である。単元別の同じ問題なので常に100点を取る塾でカンニングを勧めているようなものだ。保護者は喜ぶだろうが、長期的に見れば実力がつくものではない。逆にどんどん手軽さを求める人間になる
 
 興味のある方は広島県の公立入試問題を確認して欲しい。保護者の時代とはまったくレベルが異なっている。公立高校の入試問題としては全国的にもレベルの高い問題である。かなりのボリュームで、しかもかなりのレベルの問題を各教科50分で解かなければならない。学校の定期テストの過去問ばかりを繰り返していて、お気軽に解けるものではない

 さらに言えば、現在の中1からは内申点のウエイトが下がる。現状では内申点(成績表)のウエイトは約半分であるが、彼らからは2割程度まで下がる。実力をつけていないと合格は極めて困難である。
 
 「希望が叶う」のもう一つの希望は、望む学校に合格することである。客観的に見れば本人の能力を大きく逸脱する希望もある。この保護者の希望を逆手にとり、「本当か?」と思わせるほどのハッタリの入試実績をうたう塾もある。これは今に始まったことではない。昔から塾業界は魑魅魍魎な面があった。

 塾の実力試験を受けただけの生徒を合格実績に入れたり、まったく塾に通ったこともない生徒が合格実績に入れていた塾もある。「わが子もあの塾に通えば…」と思わせるのである。ハッタリに騙されて通う生徒も…。

 しかし、どんな上手な虚偽で固めても、3,4年もすれば、その塾に通っている生徒で有名学校に入ったか、成績が上がったかは明確に出る。ウソはいつまでも突き通せるものではない。

 保護者も冷静に「わが子」を見て欲しい。私がこの「ひとりごと」で指摘しているように、子供に希望を託すのは保護者として当然である。しかし、過剰な希望を子供に押し付けることは、子供たちの成長にとって決して良いことではない

 子供たちは保護者の希望に沿うように努力をするが、上がれば上がったで、今度はさらに希望が膨らみ、より高い希望となる。つまりゴールがどんどん遠ざかる結果となる。この繰り返しは子供の成長を阻害することになりかねない。それどころか親子の関係が悪くなる。

 自分の希望通りに伸びない子供に対して、最悪の場合は憎しみに近い感情を抱く保護者もいる。また、逆に保護者に対して憎しみを抱く子供もいる。十年以上も前のことであるが、勉強について余りにも厳しい父親に、彼が寝ているとき「包丁を突き刺しそうになった」、という中学生の女の子もいた。

「わが子だけは!」はあり得ない。どんな子供でも様々な感情が渦巻いている。親は子供に期待するが、その保護者自身が親の期待通りに育っただろうか?

 塾はその指導形式、その指導者のレベル、その顧客(生徒)のターゲット、その規模の大小などさまざまである。自分の子供を本当に親身になって見てくれる塾がどこなのかを冷静に判断して欲しい


2020年12月