横断歩道を渡る時頭を下げよう バックナンバー
先日何気なくTVを見ていたら、信号機のない横断歩道での車が一時停車する都道府県別割合を報じていた。一位の長野県の一時停車率は約85%で、最下位のある県の停車率は何と約5%だった。
信号のない横断歩道を人が通ろうとしている時には、道路交通法では停車しなければならないと定めている。特に見通しが悪いところなどでは極めて危険である。交通事故もたびたび起こる。しかし、全国的にそれを守ろうという風潮がないのである。
長野県の高い停車率の理由に驚かされた。さすがに昔から教育県と言われるだけのことはある。長野県は大人を中心に指導を繰り返したのではなく、子供たちの指導・しつけを徹底したのである。
その方法は、横断歩道を渡るときには運転手に頭を下げることを徹底させたのである。さらに通り過ぎたあとに、もう一度車に向かって頭を下げる。運転している者はこれを見ると一時停車せざるを得なくなる。
子供たちが大人になって車を運転する時は、横断歩道で人が渡ろうとするときには一時停車するのが常識になる。こういう問題解決には取り締まりを厳しくして、高い罰金を科そうという発想になる。確かに即効性はあるだろうが、取り締まりが緩やかになればまた同じような状況が生まれることになる。
ところで、日本がまだ先進国の仲間入りになれるかどうかの時代に、海外での日本人のマナーが問題になっていたことがある。海外のホテルの廊下を下着で歩く。買い物の支払いに腹巻から現金を取り出す。今では考えられない日本人の行動であった。そのため、日本人の宿泊を拒否する一部の欧米のホテルがあったとも聞いている。
子供の頃、教師がそのような行動は先進国では恥ずかしいことだと、授業中に何度も聞かされた。今から考えると子供たちを指導することが問題解決の根本的な解決方法だと、日本の指導者は考えていたのだろう。
その国の文化度を高めるお気軽な方法・手段はない。長期的な視野に立って、子供たちの指導・教育に力を入れることが最も効果的であると、再認識させられた。
前から何度もこのコラムで指摘していることだが、日本の輝ける未来を築くには教育以外にはない。1789年フランス革命の2年前の1787年、日本はまだ寛政の改革。日本は鎖国の時代で欧米にはるかに遅れていた。
それが明治維新後、たった100年で先進国と肩を並べる経済成長をしたのも、教育に力を入れたことに大きな理由があるのではないだろうか?
長野県の信号のない横断歩道での一旦停止率の高さは、子供たちへの指導・しつけでの成果の大きさに改めて驚かされる。このコラムに触れた皆さんから、信号機のない横断歩道を通る時には、運転手に頭を下げ、さらに車が通り過ぎた後にもう一度頭を下げる実行をしませんか。
2020年11月