なぜ数学の指導順序を変えるのか? バックナンバー
新型コロナ対策の影響なのか、それとも何か特別の理由があるのか理解できない学校の授業の進め方がある。
何のことか理解できないだろうが、数学の指導の順序に、首をかしげたくなる学校があることである。中1数学で、正負の計算の次に図形の内容を指導している。他の学年も同じように、この学校では授業の順序を大幅に変えている。
順序を変えて指導しても、当該学年の指導内容をくまなく指導すれば、文部省指導要領から逸脱してはいないので、その視点では全く問題はない。しかし、他の学年ならまだしも、中1はどうであろうか?
中1の生徒が学ぶのは数学だけではない。国語・英語・理科・社会の主要5科目はもちろんのこと、それ以外にも技術・家庭、音楽、体育、美術も学ばなければならない。中学生になったばかりの生徒に一気に負担が大きくなる。特に数学と英語は積み上げを必要とする学科で、中1の内容が理解・吸収できていなければ、今後ずっと苦しむことになる。
中1の正負の計算、文字の計算はすべての数学の基礎とも言うべき内容で、これが身についていなければ、今後数学ができるようになるものではない。
つまり、今後の代数学だけでなく、図形においても必須の知識となる、いわば数学の基礎の基礎の部分である。それを図形と交互に指導することは生徒の負担をさらに増やす。どの教科書会社もそれを踏まえて、図形は教科書の後半部分に編集している。
中学校に入ってやる気のあるときに、正負計算と文字計算を確実に理解させることが、その生徒の数学の今後の理解に大きく影響を及ぼす。ずいぶん昔のことになるが、中1の最初の単元が集合だった時代がある。
生徒がやる気満々の時期に、小学校の焼き直しを学ばせていたのだ。数学に変わって張り切っていた生徒たちに学ばせたのは、何と小学校の延長の内容で、当時の生徒たちががっかりしていたのを、今も鮮明に記憶に残っている。
新しい学校生活が始まり、数学という新しい学科に期待を弾ませている生徒のやる気をなくす危惧はあるが、真に図形を先にしたいなら、図形から入ればいいだけのことである。それをなぜ交互に指導しているのか理解に苦しむ。代数の指導する教師と、図形を指導する教師に分けて指導していると聞いているが、その目的も分からない。
一定以上の理解の早い生徒なら対応も可能だろうが、多くの生徒は戸惑うだけである。私はこのコラムでいつも言っていることではあるが、指導している生徒が自分の子供とか兄弟姉妹でも同じような指導法を採用するであろうか?
おそらく何か学校の都合があるのだろうと思われる。それが何かは私には知る由もない。しかし言えることは、授業の主体は生徒であり、学校でもなければ教師でもない。変則的に指導している理由を聞いてみたいものだ。
2020年09月