「食べログに公正取引委員会が調査に入る」 バックナンバー
カカクコムが運営する食べログというシステムがある。飲食店に訪れた客がそのお店を5段階評価するシステムである。ネットで行きたいジャンルの飲食店を調べて、その評価が高いお店を選ぶ人も多いと聞く。3.5以上の評価のお店は「美味しいお店」と信じている人もいる。そのため評価3.5以上を得た飲食店の客数は大きく増えるという。
食べログの評価には今まで何回か疑問が呈された。その一つは飲食店の評価を上げるのを請け負う会社の存在。つまり飲食店がお金を払って、自店に高い評価を書いてもらうのである。また、食べログの有名なレビュアーを接待して、高い評価をしてもらうセコイ飲食店も出てきた。有名なレビュアーの影響は大きく、そのアナウンス効果は絶大だった。しかし、これらはあくまで店舗サイドの問題でカカクコム自体の問題ではなかった。
次に問題となったのは、食べログの広告代理店が「食べログの評価を上げ下げ」しているのではないかとの疑惑。今まで良かった評価が有料会員に入ることを断ったために評価が下がった、との飲食店のインターネットへの投稿から始まったトラブル。これは今までとは本質的に違って、運営するカカクコム自体の問題であった。
本来、食べログは調査人件費が0円の運営。つまり、店舗を訪問してその店舗の評価をする社員はいない。単なる消費者がレビュアーとなって訪れた店舗の評価を無料で行い、その総合によって評価が決定される仕組みである。つまりカカクコムが勝手に評価を左右する仕組みではなく、消費者の評価によって成り立っているシステムである。
その食べログがまたまたトラブっている。前回の時には、評価の上げ下げは「独自の計算式」を採用したためなどと、曖昧な説明で何となく収束した。しかし、今回は具体的な書き込みがあったことからネットで話題になっている。これは食べログの評価そのものが疑われる、換言すれば食べログの存在自体が危うくなることを意味する。
* 以下の投稿が今回の端緒となった。
「うちの店、評価が3.8になって喜んでたら、次の日急に、口コミ数は変わっていないのに評価だけ3.6に下がってた。そしたら食べログからきて、年会費払えば元に戻すし、評価も上げるって言われた。もちろん断った」という飲食店らしい人のtwitterでの投稿。
実は私の知っているお店でも、「広告代理店と有料会員になる、ならないで言い争いになったら、食べログの評価が下がった」との話を聞いたことがある。
2019年10月9日に食べログに公正取引委員会が調査に入った。食べログの圧力に耐えられず、公正取引委員会に訴えた飲食店が多数あったのではないかと思われる。役所が絡むとなると「独自の計算式」などと曖昧な説明では逃れられないだろう。
それぞれのお店の経営者は、「自分の人生をかけて」営業している。消費者による評価は素直に受け入れなければならないだろうが、「社会的評価の上げ下げ」を一企業の利益のために捻じ曲げられたのでは納得できないだろう。
公正取引委員会はかなりの情報を得ているはずである。どこか納得の行かない食べログの評価の問題が明らかになることを願ってやまない。それと同時に「美味しい、不味い」の評価は人に決めてもらうのではなく、自分で決めるべきだと改めて再確認したいものである。「美味い、不味いは誰が決める。それは誰でもない、アナタである」。
2019年11月