「本当に味、分かってる?」 バックナンバー
《とんでもなく先まで予約がとれない店》 *注…《 》は週刊現代引用
上記のタイトルの記事が週間現代7月7日号に掲載された。
≪「予約6年待ちの寿司屋に行ってきました」。ネットでこんな風に自慢する人が増えている。だが、いくら良い店だとしても、どこか変だと思わないのだろうか。大人の「食」への向きあい方を考える。≫
週間現代によれば、東京の新橋駅前ビルの地下の「すし処 まさ」は広さ2坪、席数たった3席の狭い寿司屋である。記者が予約の電話を入れたところ、2025年2月まで予約で一杯だったという。
この店以外にも1,2年先でなければ予約が取れない店舗もある。それらの店舗は「食べログの評価が高い」、「ミシュランに掲載されている」などの情報によって予約困難になっているのである。
グルメ誌のライターによれば、富裕層の外国人が大金を落とす高級店ばかりが予約困難になっているわけではない。「焼肉ヒロミヤ」のようにコスパの良さが評判で予約が2年待ちとなる店もある。
何度も電話をかけてやっとつながったと思ったら、予約枠はもう埋まっていたなんてこともざらにある。どうしてこうまで人気店の固執するのだろうか?その大きな理由の一つはSNSに投稿し、《ネットで自慢したいがために》、一年以上も先のお店に行きたがるのだろう。
週間現代は指摘する。《本当に味、分かってる?》と…。目隠しテストで実験した場合、ほとんどの人はその相違が分からないだろうと思われる。そのことはTV番組「芸能人格付けチェック」でも明らかだろう。
カカクコムが運営する食べログは、今まで何回か問題になった。5段階評価の得点を上げる業者の存在、カカクコムの代理店による評価の上げ下げ、有名なブロガーによる「接待」で評価が変わるなどの問題も発覚した。
それらによって、かつての信頼度は落ちているようだ。しかし依然としてその評価を信じている人も多い。そのため、食べログの評価によって、店の売り上げが大きく変化するらしい。
ものごとは微に入り細にいると分からなくなる。カカクコムもミシュランガイドも利益を追求する会社であり、決してボランティア団体ではない。カカクコムは5段階評価を算出する計算式を明らかにしていない。
独自の計算式で算出しているという。本来、レビュアー(投稿者)による評価が基本である。前にもこのコラムで指摘したように、単純平均ではないのは理解できる。しかし、数多く投稿しているレビュアーの評価も高く、平均(ポイント3)以下の評価がほぼない店舗の評価が3以下の場合もある。何らかの意図があるのではないかの疑念は拭えない。
ミシュランガイドもしかりである。本が売れなくては成り立たない。実際海外でミシュランの出版を廃止した国もある。本の売り上げを伸ばすためには、★を獲得した店舗を変えざるを得ない。実際、広島の★獲得の店が2分の1から3分の1は入れ変わっている。
このコラムで何回か指摘したように、美味しい、不味いは誰が決めると…。それぞれの各人はそれぞれ個人の食生活の歴史を持っている。そのため美味しい、不味いは千差万別であり、他人に決めてもらうものではない。
ましてや、《ネットで自慢したいがために》、一年以上も先の予約しか取れないお店に行きたがるのは、目的と手段が入れ替わっている。さらに言えば、何年か先に「自分が何を食べたいか」など分かるはずもない。週刊現代の記事は外食の在り方を見つめ直すいい機会だろう。
2019年08月