「交通事故は高齢者が多い?」 バックナンバー
高齢者の事故が盛んに報道されている。先日の母親と女の子がなくなった大事故は衝撃的だった。当初は「ブレーキが効かなかった」と証言していたが、「ブレーキとアクセルの踏み間違いだったかもしれない」との証言に変わってきているようだ。
高齢者の事故の報道を見るにつけ、悲惨な交通事故をなくすためには、高齢者の運転免許の返納、車両に事故防止の装備をつけるなど、さまざまな対策が考えられているのは喜ばしいことだ。
しかし、一方では疑問に思うこともある。2018年の交通事故による死亡者は約3200人である。この事故による死者数のうち、一体どれだけが高齢者のよるものだろうか?その大半が高齢者とは思えない。
少子高齢社会のために、高齢者の人口も割合も2、30年前とは明らかに増えている。そのため高齢者の事故の割合が2、30年前と比べて増えているのは統計学上当然の結果であろう。
交通事故と年齢の関係について調査の情報がある。私自身が警察庁のデータを分析したものでないので、信頼度はどの程度かは分からない。しかし、私自身が考える結論と極めて類似している。
1 年齢層別の免許保有者の交通事故件数(平成30年度)
原付以上、年齢層別免許保有者の10万人あたりの交通事故件数については
① 16歳から19歳 1500件
② 20歳から29歳 750件
③ 80歳以上 約600件
④ その他の年齢層ではほとんど差がない
このデータから、高齢者が事故を起こしやすいという結論は導けない。むしろ、若者ほど交通事故を起こしやすいデータとなっている。
2 年齢層別の免許保有者の死亡事故件数(平成29年度)
原付以上、年齢層別免許保有者の10万人あたりの死亡事故件数については
① 16歳から19歳 11.4
② 20歳から24歳 5.2
③ 25歳から29歳 4.0
④ 30歳から74歳 4歳刻みで 3.0~4.1
⑤ 75歳から79歳 5.7
⑥ 80歳から84歳 9.2
⑦ 85歳以上 14.6
このデータから言えることは、16歳から19歳の若者と80歳以上の高齢者の割合がけた違いに多く、ついで75歳から79歳が多いという結果が出ている。
しかしTV報道では、あたかも70歳以上の高齢者が多くの死亡事故をおこしているかのような報道である。彼らは統計的に交通事故を見ているのであろうか?感覚的な報道-つまり、高齢者が交通事故を起こせば、最優先で報道する姿勢-に偏っているのではないか?
データから出てくる結論は16歳から19歳の若年ドライバーと80歳以上の高齢者の対策が最優先事項である。今やアナウンス効果によって若年層のドライバーの交通事故の多さが隠ぺいされているようにも感じる。
社会の木鐸(ぼくたく)であるマスコミは、常に社会を俯瞰的(ふかんてき)に見て、警告をし続ける公器であって欲しいと願ってやまない。
2019年07月