「錯覚を生む400点?」 バックナンバー
6月になると中学生はすぐに前期中間テストが始まる。中学生になったばかりの1年生にとっては、初めての本格的はテストなので不安があるだろう。
小学生のテストは単元別で、1学期の間に国語、算数は約5回。単純に見れば1年間の学習内容を14,5回に分けてのテストである。それゆえ80点を切る生徒は極めて少数派だった。
それと比べれば1年間で学ぶ範囲を4回に分けての出題のため、中学生のテスト範囲は勢い広くなる。単純な比較は難しいが、ザックリ言えば、小学生の約3倍の範囲ぐらいだろう。
しかし、中1の最初の前期中間テストは、小学生の範囲と比較してもそれほど広くない。しかもその内容は極めて易しい。
*参考:各科目の出題範囲
国:短い詩4編、小説の一部(6ページ)、漢字の部首だけである。
数:正負の計算の途中、つまり足し算、引き算がメインで掛算、割り算がまったく 入らないこともある。
英:アルファベットに毛が生えたレベルで、平均点は90点前後。
理:顕微鏡の使い方と植物の根と茎のつくりだけ。範囲の広い学校でも光合成が入 るか入らないかの範囲である。
社:世界の国々の名前と、それぞれの気候にあった各地の生活の特色。例えば標高 の高い地域で暮らす人々は、涼しい気候でリャマやアルパカを飼って生活して いるなど…。
かいつまんで言えば、その科目で学ぶための「基礎の基礎」である。そのため学校の平均点も高い。学校によって多少異なるが、5科目の合計点で370点前後である。これを100点満点に換算すれば75点である。
塾によっては最初の平易な問題で取った得点を、まるで鬼の首を取ったかのように声高に叫ぶ塾もある。逆に言えばそれしか点を取らせられないことを自ら白状しているようなものだ。
2回目のテストからテストらしいテストになる。これもまた学校によって異なるが、5科目合計で310点前後が平均点で、100点満点換算すれば62点である。
ところが、絶対得点(素点)でしか判断のできない人がいる。私の知る限りその割合は結構多い。400点は旧六校の目安の得点であるが、それは平均点が500点中310点前後の場合である。つまり1回目の得点400点は旧六校レベルではない。
しかし、400点を取ると希望と期待が膨らみ、子どもに過剰な期待を寄せる保護者もいる。前期中間テストで400点の生徒は以降の普通のレベルでは335点に過ぎない。
しかし、そういう人に限って、前回400点の子が以降の得点で335点になると、「65点も下がった」と感じるのである。それだけではない。最初の前期中間テストでは前述のように、範囲が狭く内容的にも易しいので、運よく400点を越える場合がある。世間でいうマグレである。
小学校の基礎ができていなくて、1回目に運よく400点を越えた生徒は、ある面では不幸である。保護者は400点は当然取れる得点だと勘違いし、過剰な期待を子どもにかけ続けるからである。
私がこのコラムで何度も書くように、過剰の期待は子どもにとって重荷以外の何物でもない。子どもは親の期待に沿えるように必死で頑張るだろうが、頑張れば頑張るほど親の期待は大きくなる。つまりゴールを変えるのである。
これでは永遠に親の期待に沿えることはありえない。最終的に親子の関係さえも悪くなる。子どもに期待をするのは決して悪いことではない。しかし、過剰な期待は逆に子どものやる気を無くすようなものだ。子の成長をそっと見守ることこそ親の務めではないだろうか?
*参考:以下の計算で、上がったか下がったかが分かりやすい。
本人の得点÷学校の平均点
例:1回目のテスト 本人得点 400点 学校の平均点 375点 1.07
2回目のテスト 本人得点 350点 学校の平均点 310点 1.13
50点も下がったと感じる人がいるが、実際は上がっている。
2019年05月