「いま、進徳女子高が熱い!」 バックナンバー
有名中学も高校も大学も時代とともにその評価は大きく変わる。どんなに評価が高い学校であっても、徐々にその評価が変わるのは世の常である。例えば、約30年前と今では東京の私立大学の評価は大きく変わっている。
私にはいま最も注目している高校がある。それは広島の進徳女子高である。失礼ながら、約20年前は素行が決して良いとは思われない生徒も多かったように思う。中退する生徒も1学年に2けたも居たと聞いている。
これは進徳高校に確認した数ではないので、真偽のほどは分からない。しかし、そういう伝聞が私の耳にも漏れ伝わっていたということだ。実際、私の知人にも中退した子がいる。
少子社会における生徒数の減少に対応するためだろうか、進徳女子高は今大きく変わろうとしている。私立高校の組織がどうなっているか知らないので、最高決議機関を仮に理事会と呼ばせて頂く。
おそらく、この方針変更はその理事会の一部の意見ではなく、強い統一意思として決議されたのではないか。さらに、それを運営する学校の校長、教頭、学年主任など司令塔となるべき人々も、少子化の中で生き延びることの厳しさを共通認識としているのだろう。
それだけではない。それを実行する実戦部隊の先生方も、同じように厳しい認識を共有し、それぞれの立場で実行されているようだ。「今の進徳女子校は決して高いレベルではない。しかし、一人ひとりの躾をしっかりした高校を目指す」との強い共通認識である。
これは余談だが、ある荒れた高校について聞いたことがある。問題行動を起こした生徒の後始末と指導で、教師はヘトヘトになっていた。しかも、どんなに努力しても学校全体として捉えると、問題行動を起こす生徒は減少しなかった。
そこでこの高校は問題行動を起こすだろう生徒の入学を止めた。学校経営を考えると、生徒数減少への不安はいかばかりだったろう?しかし、この大胆な方針で、高校の世間の評価は徐々に変わり、偏差値の高い高校になったという。具体的にその高校の名前も所在都道府県も覚えていない。ただ、東京か大阪の大都市圏だったような…。
それぞれの高校にはそれぞれ独自の問題点を抱えており、どういう解決方法が良いか、数学のように、ただ一つの正解はない。それぞれの組織で解決法を模索し、試行錯誤するしかない。進徳女子校には進徳女子高の解決方法と目指す方向がある。
その方向性が「一人ひとりの躾をしっかりした高校を目指す」である。家庭で保護者自身が躾ができなくなっている現況において、社会的にもそのニーズがあるのは間違いない。塾においてすら、家庭ですべき子育ての一部を依頼する保護者が増えている。
つまり、子を怒れない保護者がいる一方、口うるさく、「うざい!」と子どもに相手にされなくなっている保護者もいる。「うちの子を怒ってくれ!」と頼まれることもある。塾は全人格教育をになう組織ではない。塾は簡単に言えば「勉強部」である。我々はその勉強部の顧問とか監督に過ぎないのだ。にも関わらず、塾にさえ「子どもの躾を求める」社会的ニーズがある。
ところで、十数年前までは、一部の大手は例外として、塾は高校に見向きもされなかった。保護者の進路指導への塾の信頼が大きくなるに連れて、私立高校の塾へのアプローチが盛んになった。
中でも進徳女子高のアプローチには目を見張らせる。私は出張中でお会いしたことはないが、本部教室の先生の話を聞くと驚かされる。形式的に塾を訪問する私立高校の先生の数は増えている。
だが、その多くは、上から命令されて仕方なくとか、マニュアル通り、に感じさせる。それに反して、進徳女子高の先生方の訪問は、強い意識を感じさせるのである。
進徳女子校の目指す高校のイメージは「広告写真」で一目瞭然。ほのぼのとした上品な高校生が2人。1人は微笑んで正面を向き、1人は温かく何かを見つめるような斜め下向き。これこそ、進徳女子校が経営陣、教師一体となって目指す高校だろう。
企業でも伸びる企業は、社員のやる気である。学校でも同じことだ。教師のやる気が高校を伸ばす。いま、進徳女子校が熱い!
2017年12月