「今の塾で上がりましたか?」 バックナンバー
塾に通う理由は何だろう?保護者と生徒の目的は若干違うだろうが、基本的には学力の向上と希望の学校の入試に合格するのが目的であることは論を待たない。
それらの目的を達成するためには、いくつかの方法がある。第一に思いつくのが長時間指導だろう。具体的に言えば、通塾日の増加と長時間授業の組み合わせである。
極論すれば、1年中休みなしの通塾で、しかも毎日夕方から深夜までの授業。これこそ究極の長時間指導だろう。しかし、それを可能にするためには、生徒の鉄のように強い精神力、驚くような高額の授業料が条件になる。
鉄のような精神も必要なく、驚くような高額の授業料も必要なく、長時間指導に近いと市場に思わせるシステムがある。それは週に5,6日塾に来させて、大半の時間を自習させる方式である。
これだと生徒の強い精神力も、目を剥くような高額の授業料も必要としない。なぜなら生徒はほぼ毎日の通塾かつ長時間指導という形であっても、うがった見方をすれば、適当にやっておれば良いのだから…。中には友達とオシャベリを楽しみで塾に来る生徒も出てくる。
「塾に行っている=勉強している」と保護者は疑いもなく思い込んでいる。そのため保護者は塾で真剣に勉強していると信じているだろう。しかし、本当に真剣に学んでいるかどうかは分からない。
本当に真剣に勉強していて、効果的なシステムなら生徒の学力は上がるはずである。だが、その思いとは逆に、思わしくない結果の場合も多々あるように思われる。
実際、週に何日も通塾したにも関わらず、定期テストに効果がほとんど出なかった生徒もいる。生徒が言うには「先生が回ってきたときだけ勉強している振りをしていた。それ以外の時は眠っていた」という。それも複数の生徒の告白である。
保護者も不信感を抱いていた。「定期テスト対策で塾に行ったのに、家に帰ってから、最初からやり直しをしなければ…」と言っていたそうだ。つまり、「定期対策テストのために勉強に行っていたはずなのに、塾で何をやっていたのだろう」、との不信感を訴えていたのである。
こういうシステムとは別に、自宅で長時間勉強させる方式もある。多くの塾で採用している「宿題を山のように出す」システムである。宿題を出せば真面目な生徒はそれをこなそうとする。すると自宅で勉強する時間が長くなる。
保護者の見える自宅で宿題をするのであるから、いかにも勉強しているように感じられる。そのため保護者の受けは良い。しかし、宿題が多ければ多いほど、逆に見逃せない問題が生じることもある。つまり、生徒が他人の答えを書き写すだけの、手抜きをすることもある。
さらに、塾で宿題の答え合わせをすると、宿題が多いだけ、塾教師は単なる答えを読むだけだったり、ホワイトボードに書くだけに終始する事態も生じる。つまり、「解説という名の単なる答えあわせ」にならざるを得ない。
淳風塾も大手の塾で教師をしていた方を採用したことがあるが、「答えをホワイトボードに書くのに精一杯」、「答えを書くだけで賢い生徒は分かるんですね」とか言っていた。つまり、出来ない生徒が出来るようになるシステムだろうかとの疑念がぬぐえない。
出来ない生徒はどこが分からないかを見つけ、それをほぐしてやらないとできるようにはならない。数学で言えば2年前に遡らなければならない子が多い。そのため塾教師は医者のような存在でなければならない、
つまり、生徒がつまずいたところを発見し、そこからもつれた糸をほぐすような指導が求められるのだ。ともすれば安易に走りがちな自分自身に、自戒を込めて指導する日々である。
2017年10月