少子高齢化の行きつく先 バックナンバー
産経新聞論説委員著「未来の年表」(講談社現代新書)をご存知でしょうか?おそらくほとんどの人が、その存在すら知らないのではないかと思う。かく言う私もまったく知らなかった。「週刊現代 7月22・29日号」にその概略が紹介されている。これを読むと背筋が寒くなる。
ざっと、年表を紹介する。(以下は週刊現代の抜粋)
2018年:18歳人口が激減し始め、国立大学が倒産の危機へ
2020年:女性の2人に1人が50歳以上に
大人用おむつの国内生産量が乳幼児と同じになる
2024年:日本人の3人に1人が65歳以上に
2025年:約700万人が認知症に
2030年:年間死者数が160万人に達し、火葬の順番待ちのための遺体ホテルが繁昌する
75歳以上の一人暮らしが約429万世帯に
2033年:全国の3戸に1戸が空き家になる
2040年:自治体の半数が消滅の危機に
2050年:日本のGDPが世界7位にまで落ち込む
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ざっと抜粋しただけでも、目を覆いたくなるような年表である。これは「こういう恐れがある」というレベルではなく、まさに統計学的に捉えられる、極めて正確な未来図である。
その根本的な原因は何か?ズバリ、少子化である。「少子化の行く末は大変なことになる」との思いは、多くの日本人がずっと持っていた不安だろう。しかし、従来、すべての日本のシステムは、人口が増えること、経済成長が続くことを前提にしている。
何となくその不安を抱きながら、政治家も役人も国民も、それを正視することなく生きてきた。それを語るときには「若者が減り、老人が増える」⇒「消費税アップが必須」⇒「さもなければ日本社会が破綻」などまるで念仏のように唱える政治家や役人。
税制全体の見直しは消費税だけでなく、先進国間の法人税のGDP比率の比較、大企業の実質法人税の現状など、より幅広い税制の見直しが必要だろう。さらには社会全体のシステムの再構築が必要になっている。しかし、心の奥では「まぁ、なんとかなる」との思いが、ほとんどの日本人にあった、そして今もあるのではないか?
ところで、企業の目的は利潤の追求である。しかし、己の企業の利益だけを優先し、正社員比率を下げ、アルバイトなどの非正規社員の増加は、不安定な身分と低収入のために、結婚できない若者を増加させた。
それは企業の未曾有の内部留保金を生んだ。しかし、自社の利益のみ追求のあり方が、長期的には自社の商品の消費者の減少-需要の縮小-を生む皮肉な結果となっている。
「わが社の利益だけ」から「社会的責任」を企業は果たさなければならない。過労死の問題もその一環である。「女性が輝く社会」-言葉は美しいが、人手不足を安価で乗り切ろうとする企業の要請と見るのは、うがった見方過ぎるだろうか?
少子化はもはや止められない状況にあるなら、高齢化と経済成長の見込めない社会に対応する仕組みを、作らなければならないだろう。小手先のテクニックでは、どうしようもないところまで来ている日本。
「週刊現代」によれば、「地方から百貨店も銀行もなくなる」「団地やマンションがスラム化」「所得税が50%、消費税が40%に」など、おどろおどろしいタイトルが並ぶ。
社会が急激にしぼむ中で生きていくには、私たちは「自分で自分を守るしかない」という基本的な姿勢が最も求められているのかもしれない。こういう時代に生きていく若者たちこそ、今の大人以上に、強くならなければならないと、つくづく感じる昨今である。
2017年08月