「廃棄ローストビーフが食卓を襲う?」 バックナンバー
「週間文春」と言えば、今では泣く子も黙る?勢いである。4月21日号でまたまたスクープ。「籾井会長の大暴走を支えるNHK美人記者」「藤原紀香は知っているのか?片岡愛之助隠し子の母」など世間の関心の深い記事を連発。
それらの記事より私が興味を持ったのは「廃棄ローストビーフが食卓を襲う」の記事である。記事によれば、京都の食文化を支える京丹波で、地域ブランドの中核を担ってきた「丹波ワイン」が廃棄ローストビーフを客に提供していたことをスクープしたのである。
つい最近ココイチの廃棄カツ事件が世間を賑わせたばかりだというのに、「丹波ワイン」は依然続けていたという。何とも信じがたい。
丹波ワインは2013年11月に食品衛生法で認められていない結着剤を使ったローストビーフを販売したとして保健所から指摘されていた。そのため廃棄処分にすると保険所に届け出ていた。ところが、処分していたのはそのうちの1割だけであった。
ローストビーフは表面しか加熱しない食品である。そのため結着剤を使って成型したローストビーフは食品衛生法で認められていない。なぜなら肉に付着する菌は表面に付き、表面・内部の細切れの肉を混ぜ合わせて結着剤で固めた肉は、菌が肉の中に入り込むからである。
あの有名な老舗の「京都吉兆」でも結着剤を使った肉を使用することを認めていたと文春は暴露している。もちろん、「京都吉兆」が認めるほど消費者には識別が困難な肉質であったであろうことは想像に堅くない。だが、ローストビーフの性質上、食品衛生法でも認められていない商品を老舗でも堂々と販売していたのである。もはや老舗だから、高級店だからといって信用できるとは限らない。
我々消費者には驚きとともに不安を感じさせる。なぜなら「京都吉兆」ですら安全性の不確かな食品で、しかも結着剤を使った廉価な肉を提供するのであるから、一般の店舗ではどのような商品が出されているのだろうかとの疑念が生じる。
実際問題として、スーパーに置かれているロース肉に「芯の先に安いバラ肉が継ぎ足されている」のもある。これ(業界ではバラ足という)を長く付けるほど原価が安くなるので、技術のある職人は「良い仕事をした」と評価されるらしい。
つまりローストビーフに適した肉の塊は高いので、安い肉からスジを取り、細切れの肉を結着剤で成型させてローストビーフとして販売するのである。いやはやトンデモナイ業界である。真面目に取り組んでいるお店にとっては、「自分らも同じように見られて心外」だろう。実際、私もときどき購入しているお店の大将も怒っていた。
さらに週刊文春によれば、「今の食品衛生法では、最終加工日を表示すればいい」という。そのため何年も前に冷凍した食品であろうと、解凍した日、ラップした日などと解釈を変えれば自由に賞味期限を設定できるのである。「食の安全性」など、どこ吹く風である。
しかし、その背景を考えれば、あながち肉業界だけが悪いのではない。安全性にはコストがかかる。「安さ」を購入の第一に据えている多くの消費者の姿勢、考え方がそのバックボーンにある。
それは肉業界、食品業界だけにも留まるものではない。トラック事故、バス事故もその遠因と考えられる。さらに言えば、あらゆる工業製品も、そのトラブルの根っこには安さを追求する消費者の姿勢が一因ではないか、と思われてならない。
顧みて、塾業界はどうであろうか?アルバイトを教師にすれば経費は安くなり、利益幅が大きくなる。「有名な塾」=「高級な飲食店」だから安心できる時代ではない。実際、問題がまともに解けない塾教師もいる。答え合わせだけのシステムなら何の支障もないから…。
2016年6月