「安芸郡府中町、中3自殺事件」 バックナンバー
またしても中3の自殺という悲しい出来事が起こってしまった。広島県安芸郡府中町の中学校の間違った進路指導が原因での出来事である。身に覚えのない中1の「万引き」が原因で「専願での私立入試」が受けられないことから、希望を失ったことが「自殺」につながった。
広島県の私立入試は、推薦入試、専願入試、一般入試に分かれている。推薦入試は、その私立高校以外に受験しないことを条件に受ける制度。今回問題になっている専願入試は、私立入試はその学校だけ受験で、公立入試は受験でき、公立に合格すれば公立高校に入学してもいい条件になっている。一般入試は文字通り推薦も専願もない。
公立高校を第一希望とする生徒のほとんどは、私立入試は専願で受験する。これは一般入試よりハードルが低い。一般入試でも合格の可能性はあるが、不安の少ない専願で受けるのが通常のパターンである。
過去に問題を起こした場合は、推薦も専願もつけてもらえない場合もときどきある。しかし、身に覚えのない生徒がそういうことになったとは!しかも、報道によれば廊下で立ち話だったと聞く。
一定の学力がある生徒でも、受験では不安が付きまとう。入試には「絶対」がないからである。自殺を図った生徒の苦悩は想像以上であったろう。教師にはっきり言える子でも、内申書に悪く書かれることを恐れて、言えなかったのだろう。
教師は内申点を含めた内申書を書く権限を持っている。生徒も保護者も悪く書かれたり、内申点を落とされることを恐れて教師に「物言えない」状況がある。その権限を背景にして生徒を抑えている教師も一部いるのではないか?
単純な入力ミス-あってはならないことだが、人間のやることだからミスはある。しかし、会議で間違いを指摘され、そのプリントだけは訂正した。しかし、サーバーを訂正しなかったとは許されない。なぜならサーバーこそが「正式」な書類とされるのだから…。
書類上の問題だけでなく、さらに大きな問題がある。教師間の普段の話し合いはなかったのだろうか?「あの生徒は1年生の時に万引きをしたので推薦できない」と教師間の普段の会話があれば、彼の自殺はなかったであろう。いかに教師間の会話がなかったかが窺われる。すべて担任の教師によって決定されるとは!
進路会議を中3担当の教師で開かれるはずである。その議題にさえ乗らなかったのだろうか?推薦・専願ができるかどうかを話し合えば、そこでミスが発覚していたはずである。形式的に「内申点何点以上」が推薦とか専願などと話していたのではないだろうか?
担任の教師だけを責めるのは酷ではあるが、生徒の一生を左右する入試に関してあまりにも安易である。教師間の会話のない学校運営だったのではないかと思われる。
そもそも学校とは何ぞや?子どもたちを健全に育てることが目的であるはず。それが子どもの自殺に追いやるとは!
2016年4月