「食品廃棄物(生ごみ)転売事件」 バックナンバー
何とも言いようのない事件である。マスコミで盛んに取り上げられている、冷凍品廃棄物を転用販売した事件である。現在の日本に、まさかこういう事件が起こるとは想像もしていなかった。
事件のあらましは以下である。
1 「CoCo壱番屋」の廃棄処分のビーフカツを廃棄業者「ダイコー」に依頼
2 廃棄業者「ダイコー」が「みのりフーズ」に販売
3 「みのりフーズ」から各方面に販売
4 スーパーで販売していたのを壱番屋の従業員が発見
5 マスコミを騒がせる事件に発展
6 「壱番屋」のビーフカツだけでなく、他の廃棄処分の品が販売されていたことが判明
少なくとも108品目が販売されていたことが判明
この件については有識者、関係者がさまざまなコメントを出している。しかし、この問題の本質は廃棄物、換言すれば「生ごみ」が販売されていて、消費者である私たちがそれを口にしたということが第一義的な問題だろう。
この問題はそれだけでなく、私たちが見落としがちなもっと根源的な問題も含有していると思う。つまり、賞味期限による食品廃棄物の多さ、米の生産量約8500万トンをはるかに上回る2倍弱が廃棄されていると実態があることだ。両者の問題が混同されて論じられている場合もある。しかし、今回は第一義的な問題に絞る。
壱番屋の後に発覚したマルコメ、イオン、ローソン、セブン-イレブンなど出るわ、出るわ、次から次と出てくる。判明しているだけでも108社に及ぶ「生ごみ」が流通していたのである。こうなれば単に個人的にやっていることでなく、廃棄物業界の一部では体質的に、日常的にやっているのではないかとの疑念が生じる。調べが進むにつれてもっと出てくるのではないだろうか?
食品のブランドで、しかも賞味期限をほんの少しずれただけの商品であれば、そのまま廃棄しては勿体ないと感じるのは理解できる。しかし、それを廃棄するために請け負った仕事である。単に賞味期限だけでなく、別の理由もある。今回で言えば、商品にプラスチックが混入していたという。「説明がなかった」とのトンデモナイ言い訳もあったようだが、説明する必要もない。
誰の目にも晒されるスーパーにまで納品していたのだから、消費者の直接目が届かない外食産業にまで及んでいたのではないかとの疑念を持つ人も多いのではないか。私が何度も指摘しているように、「安いには訳がある」との元ミートホープ社の社長の言葉が、まさに至言であったと思われる
誰が考えても、廃棄すべき「生ごみ」を転売した「ダイコー」と、それをさらに転売した「みのりフーズ」が悪いことは明確であろう。しかし、食品衛生法上では「廃棄する企業」が最後まで管理する義務があるという。
「壱番屋」はそういう意味で言えば100%被害者ではなく、法的な義務を負っていると言えるだろう。しかし、発覚後の対応たるや「危機管理の手本」と言っても過言ではない信頼できる企業であることを、逆に世間に知らしめた。
ところで、今回の問題にはもっと根深い問題が横たわっているように思う。最近観光ツアーのバス事故が頻発しているが、それと根が一つに思われてならないのだ。いずれも安さを求め、安全性を軽んじる社会風潮である。
この事件の実態は分からないが、一般的に言えば、廃棄処分費用のコストダウンのために、廃棄業者を買いたたく傾向があるのではないか?ギリギリまで単価を抑えられると、間違った生き残りの道を選択する、一部の会社も出てくることは容易に想像できる。
「安い物」の中には「良い物」だけでなく、「悪い物」も入っていることを、私たち消費者も、しっかり認識する必要があると思う。逆に「高い」から「良い物」とは限らない。安さだけを追求すると、社会全体がいびつな方向に向かうのではないだろうか? 振り返って塾業界はどうだろう?
2016年02月