円高派、それとも円安派? バックナンバー
正反対のことで、一体どちらが正しいか判断ができないことは世の中には数多くある。円高、円安もその一つ。経済学者の言い分を聞いていると、どちらにも一理あるように思う。それは立場によっても大きく左右されるのだろう。
円が高くなれば輸入品は安くなることは分かる。単純な例を挙げると、1ドル100円が80円に為替レートが上がれば、50万円の高級バッグが40万円になるということだ。それだけではない。資源の乏しい日本はエネルギー源のほとんどを輸入しており、石油の値段が下がると、その影響は各方面に渡る。
日常生活の中ではガソリン価格でそれを実感するだろう。1?150円のガソリンが120円になるということだ。もちろん、中間流通の問題など複雑に絡み合っており、そのまま単純に反映する訳ではない。石油・石炭などの化石燃料に依存している電気料金は下がる。それは家庭への直接的な影響だけでなく、企業は生産活動で電気を大量に消費しているので、あらゆる物価が下がる。
安い輸入品に対抗するためには、国内消費対象の商品を主力とする企業も、輸入品と対抗するために生産コストを下げざるを得ない。
一方、輸出に目を向ければ、輸出品の価格が上がり、輸出に頼っている企業は大きな打撃を受ける。車がその最たるものであろう。海外輸出の日本車が200万円が250万円になる。電気製品もそのあおりを受け、海外企業との厳しい価格競争にさらされる。
そうなると企業は生き残りをかけて、生産原価を下げるため生産拠点を海外に求める、また、国内生産においても原価を下げるため労働分配率を下げる。正規雇用からパート雇用へ転換するだけでなく、正規雇用の労働者の給与も下げる。
実際、この10年間、サラリーマンの給与は下がり続けている。そのことはまた国内消費を落とすという、負のスパイラルに落ち込む結果を招いている。これが日本の現状である。
円安になればその逆現象になる。つまり、輸入品の価格は上がる。原油の価格が上がれば、当然生産コストは上がり、消費者物価は上がることになる。輸出企業においては有利な状況が生まれる。
物価が上昇がいいのか下落がいいのか?消費者のある一面で捉えると、物価は下がる方が一見良さそうに思える。しかし、一般的に言えば物価の上昇は景気の良い時に起こる。物価が下がり続けることは、最終的には給与の下落に向かうことになる。それは日本が先進国からの没落を意味する。
ところが、好景気で企業利益が上がっても労働分配率はますます下がる傾向になるだろう。株価維持、激変する社会情勢への対応するために内部留保を増やしたり、配当金を増やす企業が多いからだ。グローバル化された中で、それを余儀なくされているようにも思える。つまり、物価の上昇がいいのかは、単純には断定できるものではないのだ。
こう考えると、円安、円高のどちらが良いのか分からなくなる。ただ、言えることは景気が良くなって欲しいことである。それも一過性ではなく、より長期的であって欲しい。しかし、少子高齢社会では、人口の減少は避けられず、長期的に見れば必然的に国内消費は減少せざるを得ないだろう。私の望みは「春の夜のはかない夢」かもしれない…。
ところで、塾選びの基準は何が正解なのだろう?大型教室か、それともきめ細かな指導の専門店か?
2013年01月