ミシュラン広島版の発売 バックナンバー
あのミシュランの広島版が発売されるという。日本初の東京版は日本中の話題になった。販売部数を知らないので断定はできないが、京都版はそれとは若干落ちているのではないか? 広島版は次の戦略を左右する一手であるように思われる。
ミシュランの目のつけどころはさすがという他はない。広島は原爆の投下された都市「ヒロシマ」として世界に知られている。原爆ドーム、宮島と世界的にも有名な歴史的な遺産がある。加えて、広島は市場調査の小手調べとしての価値もある。広島版が売れたなら、おそらく九州版、四国版、東北版、北海道版も発売されるに違いない。
さらに広島は3Bの街、つまりバー(飲み屋)、バンク(銀行)、ブランチ(支店)の多い街である。本店からの来客も多い。そのため国内的にもニーズがある。
ところで、どういう人たちがそのランクをつけているのか興味がある。ある週刊誌によれば、確か6,7名でその収入も書かれていた。外国人と日本人がいて、その年収は日本人の平均年収前後だったと記憶している。もちろんドル建ての給料であろうから、現在の日本の円高を考慮すれば、物価との兼ね合いにおいて、国際的にはその1.5倍の価値はあるだろう。
彼らの味覚は当然優れているに違いない。だからと言って、彼らがすべて何もかも知っているとは思えない。実際、ある週刊誌によれは調査に来た店に、材料の生産地を盛んに聞いたという。その店の経営者が日本でも最高の「○○だ」と答えると、それを知らなかったらしい。
また、彼らの評価が絶対ではないのは当然である。食とは文化で、その人その人の生きてきた食生活の中で育んだものである。つまり、歴史的、空間的な背景によって大きく左右されるのである。
さて、どこが星を獲得するのだろうか?それには私も興味がある。私の知っている限りにおいて、日本料理では市内のWはおそらく入るだろう。その繊細な料理はさすがと思わせる。有名ホテルのAのフランス料理も可能性がある。また、宮島口の割烹旅館Sも入るのではないか。手打ち蕎麦にもあるとすれば県北のSは間違いないであろう。さらには庭園料亭Hはどうだろう、などと思いを巡らせる…。
広島はお好み焼きの文化である。そのためお好み焼き屋が初めて入る可能性もある。差別化の難しい食べ物だけにどこが入っても不思議ではない。粉物に先鞭をつけて成功すれば、香川版が出版可能になる。さらに九州のホルモン鍋へと対象を拡大できる。私が「調査の小手調べ」と述べた理由でもある。
万一、私の行きつけのお店が入れば嬉しいが、その反面悲しくもある。客が押し寄せると予約なしでは食べられないだけでなく、落ち着いたお店のムードも一変するからだ。そうなると今までのお店ではなくなってしまうから…。
お店の側から考えても、今回星を獲得しても次回にも入る保証はないため不安も付きまとうであろう。
ところで、この本で市場はどう反応するのだろうか?星を獲得したお店に、一時期客が押し寄せることは十分予想できる。しかし、何度も指摘しているように味覚は十人十色で、そのあとどうなるかは予断を許さない。私自身はミシュランであれ、他のグルメ本であれ、食べログであれ重きは置かない。自分の好きな料理を食べたいときに食べるだけである。
2012年12月