淳風塾の考え方
淳風タイムズ
ウソのようなホントの話
塾長の独り言
テレビ出演
リンク
チキンハウスバナー
 

 砂上の楼閣はない!                 

  子どもたちの学力が保護者の想像以上に落ちている。国際的な学力テストの比較があるが、現場にいる私の実感とはほど遠い。ゆとり教育以降確実に学力は落ちている。保護者は現在のわが子とその同学年の比較で学力を捉えるので、その実感は薄いかもしれないが、長いスパンで捉えると恐るべき学力の低下は否定できない事実である。

 現在のいわゆる「テストで良い点を取る子」でも、問題が平易なために高得点が出やすくなっているように思われてならない。学ぶ単元が減っただけでなくその内容が実に平易になっている。

 例えば、小5算数では 

 旧指導要領内容の問題      現在の指導要領の問題

   316×0.83           26×3.2

  5.24÷1.48           39.1÷1.7

                                     

  注:淳風塾ではずっと旧指導要領で指導している。

 これは単に小数、分数だけの比較だが、あらゆる教科・分野に渡っている。現在の文部科学省の指導要領は次回の改訂では以前に戻ると報道されている。しかし、易しくするのは簡単にできるが、難しくするのは決して容易ではない。というのも、急激に指導内容を増やせすと、ついていけない生徒がさらに増えるであろうから…。

 「ゆとり教育の弊害」は内容の平易化だけに留まらない。いわゆる「二こぶ化(上位者と下位者の格差)」が急速に進む現象を生んでいる。学力の分布が偏ってきているのである。つまり、多くの識者が指摘しているように、中央に属する生徒が多く上下に行くほど少なくなる形から、2こぶラクダのように上位者と下位者の分離が進んでいる。

 加えて思考力も下がっているような気がしてならない。思考するには思考するツールである一定の知識が必要である。もっと言えば、出題された問題がたし算、引き算、かけ算、わり算のどれを使っていいのか区別のつかない生徒の割合さえ着実に増えているのである。

 「学校のテストは文章問題ができている」と指摘される保護者もいるだろう?しかし、学校の単元別問題は「わり算の単元」のときはわり算を、「掛け算の単元」ではわり算を使ってできているだけの場合もある。実際「先生、テストの問題の上に、わり算と書いてあったら割ればできる」―はっきり言う小学生もいる。

 小学生の場合は、中学入試を受ける生徒を除けばともかく、中学生では高校入試が現実的な意味を持ってくる。公立(県立)入試では内申点が約50%の重みを持つために、勉強に取り組む生徒も増える。しかし、なかなか内容が頭に入らない生徒の割合が、以前とは比較にならないほど多くなっている

 注:中学受験の生徒の中には、あまりにも難問題に取り組みすぎたために混乱をきたし、受験   しない生徒よりさらに基礎が身についていない弊害は見受けられる子もいる。

 塾教師が教えても、教えても「はじき返される生徒」が増えている状況がそのことを如実に示している。すなわち、小学生時代の基本的な計算がまともにできないために、抽象化された文字を使う中学校の計算など、何度指導されても「理解しにくい」ように思われてならない。

 文章問題になると、文章は読めても読解力不足から何を書いているのか理解できない生徒も多くなっている。この弊害は算数・数学に留まらない。英語を除くすべての問題は国語で書かれており、文章の読解力なくして問題は解けない。英語においても、関係代名詞が入ると国語の力がなければ理解できないことになる。

 基礎学力不足の弊害はそれだけではない。基礎的計算力不足は理科の計算問題ができないことになる。それは圧力、露点、運動、酸化・還元、密度、電流など多分野に渡る。国語の基礎的学力不足はそれぞれの教科の単語(用語)をなかなか覚えられない現象を生む。

 さらに、用語を覚えてもそれが使えないことになる。社会など同じ答えでも質問の仕方はさまざまである。例えば、「財政」にしても「国の歳出、歳入などをまとめて何というか?」という直接的な問だけでなく、「国が経済の安定をはかるために増税や減税を行ったり、公共事業の増減をはかる政府の活動を何と言うか?」のような問もできる。

 小学校時代の基礎の違いは保護者の想像以上に大きいと言わざるを得ない。実際、小6のときの学力で、将来65%決定するというデータを目にしたこともある。

 子どもたちには、将来生き生きとした社会人になってもらわなければならない。そのためには小学生の時代の基礎を固めておくことが極めて重要である。「砂上の楼閣はあり得ない。」今回はやや厳しい指摘だが、現場に立つ者の実感である。

2009年01月



         前頁へ  次頁へ