伸びる生徒となかなか伸びにくい生徒
伸びる生徒となかなか伸びにくい生徒がいます。その違いはなにでしょうか?「ハウツーばかりを気にする生徒は伸びにくい」−これが私の結論です。
もちろん、伸びる、伸びにくいを左右する要素は単一ではありません。一般的に言えば、素質、やる気、環境、性格、友人関係、などでしょうか?
ところで、それらの視点ではなくまったく異なる見方もあります。今回は上記とはまったく異なった視点での結論です。
どういうことでしょうか?
「この問題はどうやって解くの?」ばかりに目が行く子がいます。つまり、「なぜ?」という視点の欠如があるのです。そういう生徒は「とにかく解ければよい!」という目先の、そして短期の結果をのみ求めたがるのです。
確かに、「解き方」をすぐに教えた方が手っ取り早く、教師も楽です。その上生徒も喜びます。厳しい表現をすれば、教師の指導力が不足していても十分指導可能です。しかし、これを繰り返していると、学年が上がるに連れてできなくなるパターンが多いのです。
勉強というのはインスタントにできるようになるものではありません。時代の進み方が速くなればなるほど「お手軽さ」を求める傾向が社会全体に蔓延(まんえん)していますが、「人間の学ぶ」という行為は決して「お手軽」に成就(じょうじゅ)できるものではないのです。
「なぜ?」という視点のない生徒の特徴は、指導した内容をすぐに忘れることです。なぜなら、ハウツーは無数に存在し、覚える量が当然のことながら膨大(ぼうだい)になるからです。さらに、こういうタイプには応用が利かないという欠点も持っています。
数学に例を挙げれば分かり易いでしょう。この問題はこう解き、あの問題はああ解くなどとすべての問題を覚え切れるものではありません。しかも、公式に頼って問題を解く生徒ほど多くの公式を覚えなければなりません。
数ⅠとAだけに限ってざっと数えても、公式及び覚えるべきことは150を越します。これに細かいものを入れると200は優に越すでしょう。
それらを必死に頑張って覚えたとしても、それらを解法に使うとき、あの公式のあそこはプラスだったかマイナスだったかを間違うなどよくあることです。理系の苦手な生徒がそれらを使えるのは、せいぜい学校の定期試験だけでしょう。全範囲が出題される実力試験ともなると、どの公式を使っていいのかさえ分からなくなるのが普通です。
「中学校のときには数学ができていたのに、高校ではさっぱり分からなかった」という保護者も多いことでしょう。その原因は「この問題はどのように解くのか?」という面にばかり気に取られ、最も重要な「なぜか?」という勉強の根本原則を忘れていたからです。
そういう場合には、多くの問題が「違う問題」に見えてしまうのです。例えば、関数、方程式、不等式など基本的には同じ問題なのです。三角比、三角関数についても、「なぜか?」という視点で原理原則を理解すれば、覚えることは信じられないほど少なく、決して難しくはないのです。
勉強は一朝一夕には成就できるものではありません。目先の得点、順位のために「この問題はどうやって解くの?」というハウツーばかりに目をとられていると、自ら芽をつむようなものです。
あなたはどういう視点で勉強に立ち向かっていますか?あなたの通っている塾はどういう視点で指導しているでしょうか?
2007年09月