「今年は勝つ!カープ」 バックナンバー
プロ野球が始まって約1カ月。こう言ったら失礼だが、春の珍事とも言うべきか、セリーグでは中日、ヤクルト、横浜が予想以上に善戦している。逆に上位を予想されていた広島、阪神が苦戦している。特に今年は優勝するかもと期待されていた広島カープの低迷には驚いている。
昨年はAクラス。投手はマエケンを中心とした投手陣が充実しており、そこへ現役バリバリのメジャーリーガーの黒田が加わった。16億円を蹴って、貧乏球団のカープに帰ったことは世間に衝撃を与えた。
おそらく、プロ野球の歴史に残るに違いない。プロ野球の選手にとって野球はビジネスである。極論すれば、生活の糧である「お金を稼ぐ手段」に過ぎない。サラリーマンに例えれば、世界一の企業で評価され、必要とされ16億円の年棒を提示されたにも関わらず、その4分の1の前後の年棒提示で、しかも地方の貧乏会社へ転職したということだ。
「ビジネスはビジネス」と割り切るアメリカでは、日本以上に驚いたに違いない。おそらく彼らの考え方からは遠い発想だろう。そこに日本人特有の気質=武士道を見たかもしれない。
私は2,3年前から周囲に「黒田は必ずカープに戻る」と言っていた。なぜなら、「お役に立つ間にカープに帰りたい」と彼自身が漏らしていたらしいから…。それなら一昨年か昨年しかないと思っていた。
彼が大金を捨ててまで帰った理由がいろいろ言われている。監督が変わったこと、荒井が阪神からカープに戻ったことなど…。しかし、それらは附属的な理由であって、本質的な理由ではないのではないか。
二宮高校時代、彼はエースではなく控え投手だった。一時期、イップスに陥ったこともあるようだ。大学時代も当初は決して目立つ存在ではなかった。あることからカープのスカウトの目にとまり、他の球団のスカウトが誰も振り向かない時代からずっと彼を見続けたという。そのため逆指名の2位でカープに入団。
カープに入っても2年目はジンクスでたった1勝。どこそのFAで優秀選手を取りまくる球団ならとっくに首になっていたかもしれない。人情味のあるカープだからこそ首にならなかったのではないのだろうか。そのこととメジャーに送り出したときのファンの温かさ。彼はそれに応えたのである。
練習に取り組む彼の真摯な姿勢と可能性を、球団も球団指導者も評価していたのだろう。その彼がやがて復活し、メジャー球団に誘われるまで成長した。そこでも彼は期待通り2けた勝利を5年も続ける成績を残した。
それがどれだけ凄いことかは単純に考えると分かる。日本の各チームの4番打者がずらりと並んだチームばかりを相手に投げて勝つのである。下位打者でも軽くホームランを打つパワーと技術を持っているチームを相手に、である。
その彼がカープに帰ってきた。否が応でも広島は盛りあがる。黒田グッズが売れまくるだけでなく、チケットの入手が難しくなっている。さらには球場にはダフ屋も戻って来ているという話もある。
今は得点力が少なく、投手は好投をしても勝てないことも多い。しかし、怪我の外国人の助っ人、特にエルドレッドが出て来ると必ず勝率は上がる。おそらく選手も優勝を意識しているはずである。「黒田を男にしたい」とも考えているに違いない。
今は我慢のしどころ。必ず強いカープが戻って来る。もう少しの辛抱だ。そう思いませんか?カープファンの皆さん。
秋には赤いユニホームが日本中に溢れる……はず?
2015年04月