地道な努力しかない! バックナンバー
この時期になると大学入試の結果がチラホラでてくる。前にも書いたように、大学は生き残りをかけて学生数の確保にやっきになっている。最近は大学もTVコマーシャルを盛んに流している。十数年前までは考えられなかったことだ。
少子化の影響を直接モロに受けるのは、私立中学、私立高校、私立大学である。我々塾業界もその影響は極めて大きい。国立大学も学校法人化し、昔のように国の丸抱えではなくなった。そのため、どの学校も入試制度の改革をやっている。
実際問題として、ベビーブームの頃の1学年の生徒数は200万人を超えていたが、今や100万人を少し越える数である。加えて大学の定員数は増えている。それだけではない。格差社会の浸透と経済不況が大学進学率を下げる傾向にある。
経済的な理由で大学に行けない人たちを救済する奨学資金の制度はあるが、卒業してもそれを支払えない人の増加がある。4,5人に1人は払えないデータもどこかで目にしたこともある。今はまだアメリカのようには表面化してはいないが、いずれ日本でも大きな社会問題に発展するだろう。そうなるとますます大学進学率は落ちることになる。
こういう社会背景で、学生数の確保の手っ取り早い方法は学生の早期囲い込みである。AO入試なる方法で、見学とか体験を実施し、入学のハードルを下げる方法がどの大学でも採用されている。さらに学校推薦だけでなく自己推薦の方法を採用し、ハードルをより下げる大学も増加の一途をたどっている。
つまり、実力試験である一般入試で合格する学生数は、その定員からするとますます狭き門になっているのが現状である。この傾向はさらに加速度的に増えるであろうことが容易に想像できる。
一般入試で勝負する生徒と推薦入試で入る生徒では、その難易度には大きな差が生じるのである。特に指定校推薦の場合は落ちることがなく、合格率は100%である。
*指定校推薦:それぞれの高校はその高校独自に、つながりのある大学に推薦枠を持っている。伝統のある高校ほどその枠は多く、例えば早稲田大学に2名、慶応大学に1名など…。その推薦枠に入れば半ば自動的に合格する。
その推薦枠に入れるかどうかは普段の成績表である。指定校によって異なるが、成績表の5段階評価で平均4.5以上とか4.2以上などの条件がある。つまり、学校の定期試験で一定の得点を取っておけば、それらの条件がクリアされるのである。
市場原理で言えば、需要と供給のバランスがどんどん崩れている。選択さえしなければ入れる大学はいくらでもある。大学を目指している生徒・保護者にとってはまさしく吉報に違いない。
しかし、冷静に考えると、大学に入ることが目的ではない。一部の人を除けば、将来の就職のための手段に他ならない。また、就職した企業での出世を目指す-生活の安定-ことも理由に挙げられるだろう。
本来、人生の分岐点、分岐点で努力を必要とするときに、一部の大学・学部を除いて、大した努力もしないでそれを楽々クリアできるシステムになりつつある。加えて大学・学部によってはチンタラした生活を送っても卒業できるシステムがある。若い時からそういうシステムの中で育てられた人たちが、世の中を甘く見ることが身体に染み付けば、就職で大きなしっぺ返しを受けることになる。
多くの人が入りたいと願う企業は、就職の際の倍率が高いだけでなく、入ってからの競争も並大抵ではない。加えて、その企業で生き抜くためには一定以上の知識が必要である。そのため一方では必死に努力をしている若者もいる。こういう社会のシステムが続けば、ますます格差社会が広がるに違いない。
社会は一方では若者に優しいシステムを構築しながら、他方ではより厳しいシステムになっている。こういう社会の中では、若野もたちは安易に流されることなく、常に前向きに行きていくことがより重要ではないだろうか?
2014年12月