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 幸せって何だろう            バックナンバー

 車で移動するとき、最近聴いているのは「さだまさし」氏のトークである。学生時代「落語研究会」に入っていただけあって、その語り口はまるで落語のそれであり、「新作落語」とでも言えるだろうか?その軽妙なトークはまさに抱腹絶倒。それだけでなく、彼の温かい人柄が感じられ、ほのぼのとした気持ちになり、自分の来し方行く末を今一度考えさせられる

 その中でも
「十津川村」の話は、彼の真骨頂とでも言えるのではないだろうか?話の要旨は以下である。

 五日間の休暇を取って、一人で奈良県の最南端の十津川村を訪問。十津川村は日本で最も広い面積の村(琵琶湖の大きさ)である。神戸大震災のとき、「さだ」氏は両親を亡くした子どもたちが一緒に生活できる「浜風の家」を建てる手伝いをした。そのとき十津川村の有志がお金を出し合って、「浜風の家」を建てるために、十津川村の材木を送ってくれた。そのお礼を兼ねての訪問である。

 十津川村は百年以上も前(明治22年)に、未曾有の大水害に襲われて、村が壊滅状態に陥った。彼らは村を捨てて北海道に移住した。そのとき神戸の港から出発。神戸の人たちは彼らを厚くもてなし、一人一人に餞別をプレゼントした。その中に「新天地での成功を祈る」と書いた手ぬぐいも入っていた。北海道に渡った彼らはその手ぬぐいを見ては励まされ、立派な新十津川村を北海道に作り上げた。

 十津川村を訪問した「さだ」氏はその話を聞いて深い感銘を受けた。
彼らは百年以上も前に受けた恩を忘れずに返したのである。そういう十津川村の人たちの心根に触れ、彼は十津川村の大ファンになったという。

 京都の坂本竜馬の墓のすぐ後ろには十津川村出身の郷士の墓がある。彼らを「信頼できる人たち」だと、坂本竜馬も考えていたからだろうと、氏は語っている。

 最近、「村おこし」「町おこし」と称して、道路、建築物、いわゆる「箱もの」に頼る傾向がある。それも一手段かもしれない。しかし、建物にお金をかけたさまざまな町があるが、どれだけ成功しているかはなはだ疑問である。むしろ、建築費と維持費に四苦八苦している市町村もある。また、高速道路がついたために、近隣の商圏に組み込まれて、逆に過疎化が急速に進む現象も考えられる。

 十津川村の村長も村議会の議長も高速道路など考えてもいない。まっぴら御免だと彼らは言う。
高速道路ができれば、逆に「通り過ぎられる」だけだと。村まで来るのは大変だけど、それでも「本当に十津川村に来たい人だけ来てくれればいい」とまで言い切る。

 単に空気と水がきれいなだけでなく、温泉もあり、四季折々には自然の恵みがある。1000mを越える峰が19峰、10の川が流れる豊かな自然に恵まれた十津川村は、春にはタケノコ、6月にはアユ、夏にはウナギ…。しかも温泉もあり、マイナスイオンを辺り一面に出す美しい滝もある。

 いや、
それ以上にそこに住む人たちの厚い人情がある。百年以上も前の恩を忘れない人たちである。一度訪れた人は「さだまさし」氏のように強いファンになるのだろう。

 
日々の生活に追われ、目先の利益に翻弄されている我々に、「幸せとは何か」を、あらためて考えさせられる何かがあるように思われてならない。

2013年10月