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 混迷を続ける政治に声を上げよう     バックナンバー

 私が今までに見た最も美しい光景をふと思い出すことがある。それは一滴の水が乗った里芋の葉に朝日が射した光景である。光を乱反射した水滴は、まるでダイアモンドのように光り輝いていた。当時、小学生だった私は、それをずっと保存できないかと思った。

 田舎育ちの私の周りには、自然が醸し出す幻想的な光景が日常生活の中にあった。おそらく今の生活の中にも、そういう光景が存在するに違いない。

 しかし、都会での生活に慣れてしまったのだろうか、それとも子どもの頃の感動を忘れてしまったのだろうか、自然の醸し出す、えも言われぬ風景に出会うことが少ない。 わずかにあるのは、ときどき訪れる中山町のレストランから眺める風景である。それは山あいから立ち昇る霧を見るときである。

 平野で育った私はそういう光景を見ることはなかった。露点に達した空気が、まるで魔法のように霧を生む。それが谷間を音もなく立ち昇る。食事をすることさえしばし忘れて、幻想的な光景に見入ることも…。

 山間部に澄んでいる人にとっては、見慣れた、当たり前の光景に過ぎない。また、それは生活に不便な面もあるだろう。しかし、その水滴が木々を潤し、田畑の農産物に何らかの影響を与えているに違いない。

 何年も前に一度だけ東北地方に行ったことがある。そこには日本の原風景が至る所に残されていた。「松島や ああ松島や 松島や」と芭蕉さえ言葉を失った宮城県。今でも大型時代劇の撮影に使われるという岩手県。 しかし、大震災の爪あとはそれらの風景を一変させた。マスコミを通して見る東北地方は、至る所に瓦礫の山。大震災で命を失った人だけでなく、希望を失った自殺者の報道もある。

 それに追い討ちをかけているのが原子力発電所の問題である。見えない放射能との戦い。早急に対策を立て、それを実行すべき政府の対応は遅々として進まない。 現地で苦しむ多くの人を横目に、権力闘争に明け暮れているように感じるのは、私一人であろうか。権力維持のために、情報隠し、極言すれば嘘の情報さえあるように思われる。

 メルトダウンは、震災のときにすでに起こっていたにも関わらず、「ない!」と言い張っていた東電と政府。今やメルトスルー、いや、それ以上に、地下水となって海に流れ出す危険性さえ指摘する学者もいる。

 すべてを「想定外」という言葉で、責任逃れをしているようにも思われてならない。原発を作るとき、何人もの学者が津波の危険性を指摘していた。また、国会でそれを指摘した党もある。決して「想定外」の天災ではない。明らかに人災の要因が存在する。

 原発は安いコストだと、いまだに主張する政府首脳・財界人・学者もいる。彼らは、この東日本大震災の復興コストを加えているのだろうか?それを加えると、おそらく最もコストが高くなるはずである。それもケタ外れの高いコストになるであろう。  

 日本の原風景が残されていた東北地方の復興が一日も早く来ることを願っている。そのためにも、私たちはもっともっと声を上げなければならない。怒りを抑え、耐え忍んでいる東日本の人たちのためにも、美しい東日本を再興するためにも…。そして、人と自然が醸し出す情景を取り戻すためにも…。

2011年07月