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 新指導要領の先行実施は何をもたらすか?       

新学習要領に関して本年度から先行実施が始まる。最終的にどのような形になるのか明確ではない。しかし、「ゆとり教育以前に戻す」ことになるのではないか?

 このコラムでも何度も指摘したように、昨年度までの内容は目を覆いたくなるほど平易になっていた。それは理数系だけでなく文系の科目にまで及んでいた。

 今まで触れたことは無かった英語に例をとると、最重要単語と称して中学校では100単語にまで絞っていたのである。それ以前は指定単語として約500単語であった。今回の改正では単語指定はなく、各教科書会社が1200単語を目安に編集することになった。文部科学省の指定単語はないようだ。

 もちろん、教科書に出てくるすべての単語を覚える必要はない。しかし、私の想像では500単語前後は覚える必要があるだろう。つまり、今までの単語力とは雲泥の差が出てくることになる。

 単純に計算して1学年33単語から約170単語に増えることになる。記憶力のいい生徒なら、従来の1ヶ月3単語など単語を覚えるための復習など必要はなかったろう。しかし、今後は単語を覚えるだけでも一定の勉強を強いられることになる。

 社会については何度も指摘したが、地理でも当然の結果になっている。外国関係では20年前までは世界の大半の国々を学んでいた。それが30カ国に減り、前回の指導要領では何と3カ国にまで削られていたのである。

 今回の指導要領では各地域の特色―アジア、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、ヨーロッパオセアニアーを学ぶことになっている。これは地域の産業、宗教、文化の特色を学ばせる、つまり世界全体の主要な国々を学ぶことになるであろう。

 また、日本地理においても同様である。ゆとり教育では象徴的な3つの県を理解させるだけであった。今回からは全国をカバーする方向へとなっている。当然と言えば当然の指導要領の改訂と言えよう。

 さて、これらの指導要領の改訂は生徒たちにどのような変化をもたらせるのであろうか?マスコミも指摘しているように、現在の成績分布は「2こぶ化」(学力の分布が松山中央が多い正規分布ではなく、一部の学力の高い生徒の塊りと学力の低い塊りの2極分化)になっている。

 内容が平易になっているに関わらず「2こぶ化」とは不思議な現象だが、平易になり過ぎたために勉強しない生徒が増加したと考えられる。実際、「置き勉」と称して学校に教科書の類を置きっ放しの生徒も増加しているようだ。

 覚える内容が急激に増加すれば、2極化がさらに進むのではないだろうか?なぜなら生活習慣は容易に変わるものではないから、当初は従来どおりの生活を続ける生徒が大半であろう。さらに保護者に指導要領の変化が浸透するまでには時間がかかるであろうから…。

 それだけではない。地理、歴史など今までの知識があまり影響しない科目はまだ対応は易しい。ところが、数学など積み上げを必要とする科目への対応は極めて難しくなることが容易に予想される。

 もちろん、長いスパンで捉えれば、今回の改訂は大正解であることは間違いない。が、この数年間に限って言えば、現場は混乱すると思われる。それは生徒たちだけでなく指導する側にも考えられる。基礎の出来ていない生徒に、さらに増えた指導内容を理解させる難しさである。

 細かな内容は割愛するが、現状では約分さえスムーズに出来ない中学生が増加している。図形の面積など、十数年前の生徒なら「当たり前に出来ていたこと」も難しく感じる生徒も多い。小学校時代に基礎が出来ていないことの弊害は驚くべき状況を生んでいる。

 日本は資源が豊富でない。一定の水準以上の知的労働者を育み、付加価値の高い商品の加工貿易か、レベルの高いソフトの開発以外には日本が生きていく方法はない、これは変わらぬ私の持論である。

 そのため淳風塾はずっと旧指導要領の内容をおさえた指導をしてきた。遅くない時期に旧指導要領が復活する日がくることを確信して…。その方針は決して間違いではなかった。しかし、こんなにも早くその日が訪れるとは思わなかった。

 バブル崩壊後、失われた10年と言われたように、教育も失われた10年と歴史は言うかもしれない。現場に立つ我々は「知的レベルの高い国民」を育むという社会的責任を自覚して、職員一堂頑張って行こうと気持ちを新たにしている昨今である。

2009年4月 


        
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