「ミシュランのアナウンス効果-広島版」 バックナンバー
「この問題は難しいゾ!」こう言って問題をやらせると、一部の勉強の苦手な生徒の正解率は落ちる。勉強が苦手でない生徒はほとんど影響がない-これをアナウンス効果という。
2013年にミシュラン広島特別版が発行された。三つ星を獲得した店舗が1、二つ星は5、一つ星は25店舗。ミシュランの出版以前に私が行ったことのある店は30店中8店舗。その大半の店はいい店であると感じたが、一部はそれほどでもないと思ったのも事実である。この店が星を獲得するなら、別の○○店の方が明らかに上だと思われる店舗も多々ある。
星獲得の店には共通の特徴がある。まず、第一に清潔であること。次に原材料の仕入先がしっかりしていることが挙げられる。また、個人的に感じられるのは、低料金の店は別にして、一般的に言えることは、世間相場よりやや高めの価格設定であること、予約制の店舗が多いことであろうか?
ところで、出版されてしばらくした6月に、出版する前と出版された直後の6月の食べログのポイントの数を調べた人がいる。ミシュランが食べログにどれだけの影響を与えたのかの調査である。実に面白い発想である。ネットで偶然見つけたこの調査を、現時点ではさらにどのように変化しているかを調べてみたくなった。簡単に言えば二番煎じである。
すると面白い結果が得られた。この2年間で0.3ポイント以上あがっているのが3店舗。3.18から3.78に実に0.53ポイントも上昇している店がある。星3つを獲得したNである。逆に0.3ポイント以上下がっているのが3店舗。3.56から3.11に0.45ポイントも下がったE。広島を代表すると言われるKは4.09から3.7に、何と0.39も下がっている。食べログで4.0を越えるのは極めて高い評価である。それが3.7にまで下がるとは!
ミシュランに掲載されたから一気に料理が良くなったり、悪くなったりするとは思われない。急降下のKは明らかにアナウンス効果ではないかと思われる。誰もが三つ星と想像していたKが星が一つだったために、イメージダウンして急降下したのではないだろうか?逆に急上昇のNは広島唯一の三つ星獲得によってプラスのアナウンス効果をもたらせたと思われる。どちらにも行ったことのない店なので詳細は想像でしかないのだが…。
今まで食べログで得点がなかった店でも星を獲得して厳しい評価をされたところもある。罵詈雑言に近いコメントを書かれているお店。これでは星獲得が逆にマイナスになっている。星を獲得したので期待して食べに行ったのだろうが、それが期待以下だったので、厳しい評価をしたのだろう。
また、食べログの評価が変化する要因は別にもある。今まで知られていなかったお店が多くの人に知られたので、訪れる人が増えて上下したのではないかと思われる。例えば、穴子料理で星を獲得したFは地元産の穴子を使うことで地元では知られていた。それがミシュランによって広く知られることになったのだろう。
ところがである。この30店舗の最近の2年間で、全体平均の変化は何と0.006ポイントに過ぎず、統計上誤差と言ってもいいほどでほとんど変化していない。つまり、全体として捉えればアナウンス効果はほとんどなかったと言えるだろう。広島は商売が厳しいことで知られているが、あのミシュランでも一部の店舗を除き、アナウンス効果がほとんどなかったと言えるだろう。恐るべし、広島!
2015年11月