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 暗い社会に一筋の光明         バックナンバー

 最近、タイガーマスク「伊達直人」氏がマスコミの注目を浴びている。児童施設にランドセル・学用品などをプレゼントすることが全国各地で起きている。今朝の報道によると1000軒を越えたようだ。

 梶原一騎氏の漫画の主人公の伊達直人は、施設出身のプロレスラーで、正体を知らない施設の子たちには、キザな兄ちゃんと思われているが、ファイトマネーを施設に送り続ける「心優しい青年」である
 両親がいない、生活苦、家庭内暴力などを抱えた施設の子どもは全国で多数いる。しかし、数年前と比較して、施設への寄付の金額は減少していて、維持させるのは大変な状況のようだ。子どもたちにとって、全国に多数生まれた「伊達直人」氏は英雄にちがいない。

 最初に施設にプレゼントした人は、その漫画を見て育ったのだろうか?マスコミに報道されると、またたくうちに全国にその輪が広がった。凄惨な事件とか不景気で暗いニュースに溢れる昨今、実に清々しい気持ちにしてくれる出来事である。

 ボランティア活動をしたい、社会に貢献したいと考えている人は意外に多いのではないか?しかし、どうしたらいいのか分からない人が多いのだろう。その人たちに、実にカッコいい形で、手本を見せてくれた「伊達直人」氏。素直に拍手喝さいを送りたい。

 正体を明かさなくても良いこと、自分にできる範囲で可能なことが、それを全国的に広めさせた理由でもあろう。

 日本を覆う表現しがたい閉塞(へいそく)感…。右肩上がりの社会から、今や負のスパイラルに落ち込んでいる。十数年前と比較しても、個人の年間収入は数十万円も下がっている。その上、財政再建という大義名分で、消費税が上がるかもしれない不安を抱えている。

 企業利益が上がっても労働分配率が下がり、生活レベルは下がる一方…。それに追い打ちをかけるような「消費税アップ」の議論。一方では、企業の法人税の引き下げが論議されている。政権交代の最も大きな原動力になった「生活第一」「無駄を省く」のマニフェストは、一体どうしたのだろう?

 さらに、長期的にとらえれば、人口減少が続く社会に未来はない。子育てはおろか、結婚することさえ困難になりつつある。これでは人口増を望むべくもない。世界的にも珍しい程大人しく、しかも慎み深い日本人は、将来、地球上から消えてしまうのだろうか?そういう「暗い社会」一筋の光明を投げかけてくれた「伊達直人」氏。

 社会的な弱者は他にもいる独居老人もしかり。物品ではなく、彼らに声をかけることも「伊達直人」になれるのではないか。彼らにとって、誰かと話すことは最高の悦びではないだろうか?

 梶原一騎氏が願ったことは、施設へのプレゼントという形を取ってはいるが、社会的弱者への思いやりではなかったのではないか? 日本に都市化が進むに連れて薄れた人間関係と、日本人の持つ特有な優しさが、これを機に蘇るのではないかとさえ希望が膨らむ。

 これが一過性の流行ではなく、継続的な運動になればと願っている。私も自分の普段の生活の中で、単に傍観者でなく、「伊達直人」を目指したいものだ。

2011年01月