子育てが入試結果を左右する? バックナンバー
今年の入試もほぼ終わりました。目標の高校に合格した生徒、涙を飲んだ生徒-悲喜こもごもの結果は入試にはつきものです。今回の入試で再確認したことがあります。合否の結果の理由がどこにあるかということです。
その理由の一つは、最初から手が届かないレベルの受験であったのではないか、です。誰にも行きたい学校はあります。しかし、行きたい人が多い学校ほど入試は厳しくなります。本人の学力がそれにはるかに遠いレベルであれば、合格が厳しいものとなるのは当然と言えば当然でしょう。
本人、保護者が「現状の力」を正しく理解していない場合は意外に多いのです。何を根拠に合格すると考えているのか理解しがたい人もいます。学校の進路指導、塾の進路指導で客観的な数字を示されても「それでも何とかなる!」と思う生徒、保護者がいるのです。入試の数字は冷厳です。感覚的なものではありません。1点が結果を左右するのです。10点、20点不足していれば勝負にはなりません。「何とかなる」ものではありません。
これは入試に限ったことではありません。仕事でもまったく同じです。課長、部長、役員、社長に誰でもなれるものではありません。現状の実績、本人の素質、周りの人間関係、社会情勢などさまざまな要因をクリアしなければ不可能なのです。
子どもの勉強だけが例外事項ではないのです。極論すれば、「頑張れば何とかなる」のなら、保護者全員が社長になれることになります。
さて、不合格の理由はこれだけではありません。特に当落線上の生徒の場合には、生徒の精神力が大きく左右します。「絶対に合格する!」-強い気持ちを持った生徒と、「どうでもいい」と思っている生徒の差は想像以上に大きいのです。
最後の追い込みの時期ほどその差は出ます。執念を持った生徒は、やるべきことを確実にこなします。一方、「どうでもいい」と考える生徒は、気分が乗れば頑張るが、気分が乗らないときは適当にやり過ごします。そういう生徒は欠落した科目、単元が生じます。これは入試にとって大変なハンディを背負うことになるのです。
保護者の子育て、受験生への対応の仕方によっても結果は大きく左右されます。「アレもしなさい、コレもしなさい!」と常に口やかましく言う保護者がいます。本人は「子どものため」に精いっぱい励ましているつもりでしょうが、客観的に言えば「足を引っ張っている」以外の何物でもないのです。
「アレもコレも」できるものではありません。それほどの素質、能力、精神力があればすでに出来ています。毎日、毎日こういう繰り言の中で生活していると、無気力な人間になります。保護者自身の家庭、職場を想像して下さい。
「あの仕事、この仕事をもっと何とかしろ!」「売り上げを上げろ!」「時間を無駄に使うな!」「頑張りが足らない、しっかりしろ!」などと言われ続けると、どういう気持ちになるでしょうか?もちろん、上司は「あなたのため、会社のため」に言っているのです。
ましてや、11歳~14,5歳の子どもです。どんどん自分の殻を作ります。家庭内でしゃべらなくなる、声が小さくなるなどの症状がでます。私は専門家ではありませんが、そういう生徒を数多く見てきました。保護者が良かれと思っている行為が、実は子どもを追い詰めているのです。
昨年もこの時期に同じようなコラムを書きました。今年の入試結果も、子育ての違いが入試結果を大きく左右することをしみじみ感じさせました。